ブライアン・オーサーコーチが女子シングルについて語っています。

ロシアでのテストスケートの時の、ブライアン・オーサーコーチのロシアメディアでのインタビューがありましたので、一部を抜粋して訳してみました。

英訳された記事はこちらです。

ロシア語→英語→日本語です。

I→質問者

B→ブライアン・オーサーコーチ

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ブライアン・オーサー︰最初の試合は初めてのパンケーキに例える事が出来る。】


I︰貴方はテストスケートのフリープログラムの日に来ました。どこでジェーニャのショートプログラムを見るために都合をつけたのですか?


B︰私はジュニア・グランプリのリガにいました。試合の後に、すぐにモスクワへと飛んで行ったんです。ジェーニャのショートプログラムはユーチューブで見ました。


I︰彼女の演技にはどのような印象を持ちましたか?


B︰当然ですが、彼女のベストな演技ではありませんでした。でも大まかには、全て上手く行きました。私達はとても責任感のある一週間を乗り越えました。ジェーニャには非常に優れたプログラムがあります。素晴らしい振付で、彼女は複雑な要素をやります。そう、彼女は幾つか失敗をしました。でもまだ9月の初めですから…


I︰ジェーニャの身体的な状態についてどう思いますか?


B︰エフゲニアは今良い状態にあると言えます。もしジャンプやスピードについて言うならば、私は正直に前向きな反応を返しましょう。私達はまだ更に加える事が出来ます。それから私自身にとっては必要な、大切な情報はジェーニャの迅速な準備に関してです。ベストな演技ではなかったですが、彼女のスケーティングは良いです。

賢明なタマラ・モスクヴィナが教えてくれました。今私がいつもシーズン初めに言う事です。最初の試合というのは、有名な格言ですが、初めてのパンケーキに例えられます(笑顔)時々は悪くないものになります。でも大抵は理想からは遠いものです。その瞬間に、どれだけの小麦粉、砂糖、塩が必要なのかを理解します。それと、その他のそんな感じの物もね(笑) 私にとっては、こういうテストスケートというのは初めてのパンケーキなのです。

彼女のこれらの失敗は直す事ができます。全ては良いんです。私達にそういうものを見る機会があるのは良い事です。この意味では私達のミッションは完結しました。このようなテスト・スケート組織の連盟にとっては合理的なステップです。彼らが全てにおいて要求している時には。

真実として、多くのスケーター達が失敗した事に気がつきました。とても深刻なものも含めて。そしてこれは理解と共に扱われるべきです。何故なら多くの選手にとって、今は準備におけるとても早い段階ですから。


I︰フリープログラムの「メモリーズ・オブ・ゲイシャ」は彼女のキャリアでベストだ、と貴方が言ったと、エフゲニアが話していました。


B︰はい。本当にそう思います。


I︰貴方の意見を説明して下さい。


B︰まず第一に、エフゲニアは初めて素晴らしいシェイ・リーン・ボーンと組みました。彼女は、このフィギュアスケート界で類稀なる振付師です。エフゲニアの動きに新しい機微をもたらします。彼女のスタイルをリフレッシュするために。この音楽のやり方はまさしく今エフゲニアが必要としているものだと、確信があります。彼女はもう15歳の少女ではありません。ですが若い官能的な女の子です。このプログラムはそのようなものに見えます。エフゲニアは完全なる新しい方法を明らかにしました。女性のように感じているのです。

第二に、彼女がどれほど心から日本と繋がりがあるもの全てを愛しているか、知っているでしょう。彼女にはこの国に巨大なファンのコミュニティがあります。そしてジェーニャ自身もこの文化を良く理解しています。彼女がその中にいるように感じているのです。彼女は非常に優れた事をやりました。その後に、私はこのプログラムをベストだと呼ぶことが出来ます。


(中略)


I︰ブライアン、試合が恋しいですか?コーチとして、貴方にとって彼らはどのような事を意味しますか?


B︰そうだね、スケーターとしても、私は特に試合が大好きでした。競争的な魂です。でも、ある段階で私はこのストーリーを終わりにする時が来たのだ、と気づきました。私は良いアスリートだったと思いますよ。その頃を楽しむ事が出来ていましたから。でも今は恋しくはありません。今は指導をしています。そしてこの仕事が好きです。私はこの仕事から同じ感覚が得られるようにしたいです。氷上にいた頃と同じように。

私はフィギュアスケートを愛しています。今でも試合やショーの過程が好きです。この雰囲気をアスリートと共有する事が好きです。何か新しいものを見せる事も。それを楽しみに待っています。私はいつも情熱を持っているんです。観客や審判がどのように反応するかを観察する事も大切です。彼らがアスリートの進歩を見ているかどうか。そのような瞬間は私達はいつもベストを出していると言えます。フィギュアスケーター、コーチ、私のチーム全員がです。

はい、時々は全てが計画通りには行かないものです。そして、そのような瞬間は誰にとっても厳しいものです。しかし私達が出来る全ての事は、仕事に励み続ける事です。


I︰試合の話題ですが、今はロシアの女子チームは極めて高いレベルです。


B︰そうだね、ただ素晴らしいよ(笑)標準的なものがとても高い。今では関門を抜けるのは更に厳しいです。ニューフェイスフィギュアスケート界に登場しています。これは競技会にとって非常に重要です。競技会はいつも良いものです。現在は年上の女子選手達、エフゲニアやエリザベータ(・トゥクタミシェワ)のような選手には、経験を伸ばす機会があり、彼女達自身のために前へと一歩を踏み出すのです。

新しい世代の少女達は1番になりたがります。彼女達の技術とジャンプは深く印象に残ります。そして、ただそのように、フィギュアスケートは興味深いものに変わります。争いは勢いを増して行くでしょう。そしてこのような状況では、私達は同じ足場に留まる事に慎重になる必要があります。


(中略)


I︰貴方達の繋がりについて話しましょう。貴方達二人の間には完璧な理解があると言えますか?貴方、トレイシー、そしてジェーニャの間には?


B︰はい。確信を持っています。今は私達の間に特別なハーモニーがあります。当然、協同の最初の頃には、関心事の争いが幾つかありました。でもこれは普通の事です。そして今、私達は一つの進路を追っているのです。私にはエフゲニアが私達のより良いトレーニングへのアプローチを理解し始めたように見えます。特に昨年の夏から。

もちろん私は自信を持って彼女に話す事は出来ません。でも彼女はずっと長い間方向性を選ぶ事が出来なかったと感じました。文字通り、交差点で止まっているのです。去年までは、ジェーニャは時々違った方向へ引っ張られていました。彼女は通常のトレーニングシステムと私達が提案した新しいスタイルの狭間で悩まされていました。今ジェーニャは私達の姿勢を受け入れたのが見えます。そしてこれはとても重要です。彼女は私達を信頼しています。ですから一緒に全ての事が出来ます。


I︰それでは第一に新しいシーズンのジェーニャから何か見たいですか?


B︰私はこの2日間彼女をずっと見てきた役員達と話す機会がありました。彼らは全員がジェーニャがどれだけ変わったかを言及しました。私は子供達との類似点を比べたりしました。私には子供なんていないのに。人は彼らがどれだけ成長したのか気づかないかもしれない。ところが6ヶ月間会わなかった誰かを見る時、人はこうなります。"なんて事だ!なんと成長した事か!"と。

可笑しな類似点があります(笑顔)その、私が話した事とは、前回の世界選手権で見たジェーニャなんです。6ヶ月前ほどです。今は彼らは彼女の変化に対して、とても晴れやかに反応します!そして私も確信します。彼女はより良く変わったと。でも私は人がワオと言う効果抜きに説明しましょう。ほら、彼女はスピードが伸びました。そして違った風に動き始めたのです…その、つまり大丈夫という事です(笑)

あるいは、私がとても厳しく批判するからでしょうか。私は彼女の変化を本当に幸せに思います。人は何度も何度も良くなる事が出来ます。それと、今は9月の頭に過ぎません。どれほど非常に大きな仕事がこの先に待ち受けているのかを、皆が分かっています。もし私達が今の準備を100%話す事が出来たら、全ての事がシンプルになり過ぎます(笑顔)私達は12月(ロシアナショナル)にピークになる必要があります。それから、3月(世界選手権)です。現在、連盟は彼女の支援を続けています。そしてこの事を心から嬉しく思います。でも私達はどれほどの仕事がこの先にあるのかを忘れてはいけません。


I︰もし我々が特殊な技術的要素について話せるなら、貴方は4回転サルコウに殆どの時間を使っていますか?


B︰ああそれは、はい。私達はこのジャンプに多くの時間とエネルギーを注ぎます。


I︰1日に40分とか?


B︰その通りです。とても難しい事です。でも私達は新しい一歩を踏み出そうとしています。最高到達点を乗り越えようとしています(ジェスチャーでジャンプ用の特別なハーネスを表した)。エフゲニアには出来ると確信があります。私達は身体的に準備を整える事が必要だと分かっています。ジェーニャ自身に沢山の決意がある事が大切です。彼女は筋肉を非常に鍛えています。彼女は栄養学においてもとても有能です。私達は共にこの道を進み続け、そして目標を達成する予定です。多分ロシアナショナルかな(笑顔)?まだ誰にも分かりません。


I︰それから、コーチとしてどれほど難しい事でしょうか、エフゲニアのルッツの間違ったエッジに取り組む事というのは?


B︰ああ、それは極めて難しく、神経質なものです(笑)


I︰サルコウよりも大変?


B︰多分ね(笑)何故ならルッツとフリップの調節ですから、その固定とはすこぶる難しいのです。それらの要素はまさに始まりの時から詳細が重要となるのです。それから全ては彼らの発達によるものです。私が若い頃は、私もまたルッツを学ばないといけませんでした。最初はシングル、それからダブル、そしてトリプル…このジャンプには多くの注意を払うものです。

そして今は、コーチとして、私も取り組もうとしています。特に注意深く。スケーター達が何を感じているかが分かるからです。時には押し進んで、身体を回転させて、必要な軌道は単純に見えるかもしれませんが、でもそうでは無いんです。多くは古い癖によります。以前どうやっていたか、です。

当然ですが、私は新シーズンにエフゲニアが外側のエッジのルッツを持つ事を期待します。進歩があります。でも今の所は、しばしば前のやり方に似ています。何人かの技術家はこれを失敗と呼ぶかもしれません。何人かは全てがOKな事が当然と思うかもしれません。私は今でもこの要素で彼女に完璧さを達成させたいです。そして私達はリンクでこの事に非常にたくさん取り組んでいます。彼女は、私のように、自分にはベストになる能力があると知っています。


I︰トレーニング・セッションに複雑さを加えて、貴方は、次の夏の東京五輪でのロシアナショナルチームの大使となる事に同意したジェーニャの決断に関して疑いを持ちませんでしたか?


B︰良い質問です。私はこの事について彼女と話しませんでした。でも私は彼女の愛国心とチームへの姿勢を誇りに思います。私達に関しては、エフゲニアが持つ事になるであろう重要な役割への支援にベストを尽くす事です。確信している事は、日本での私達の沢山の接点への感謝です。私達はそこで彼女のトレーニングのスケジュールを実行する事が出来るでしょう。


I︰この事で貴方が本当に問題を抱えない事を願います。早い時期の計画に戻って締め括りましょうか。今シーズン、エフゲニアはモスクワでのグランプリで演技をします。ロシアに戻る事は嬉しいですか?


B︰もちろん!私には多数のビジネスビザがあります。ですから戻って来て、前に進むだけです。これらの競技会に戻る事は素晴らしくなるでしょう。何故なら私は既に何回か羽生結弦やハビ・フェルナンデスと一緒に訪れたからです。ジェーニャと私はこの先ロシアナショナルがあります。モスクワでのグランプリの話は、彼女はそこで演技をする機会がある事にとても喜んでいると思います。

 

 

終。

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パンケーキの例え、モスクヴィナコーチは良く言いますね🥰トレイシー・ウィルソンさんがレポートでその話を質問していた映像も見たことあるので、やっぱりモスクヴィナコーチから伝わっているのかな。

このインタビューは夏のテスト・スケートの時のものですが、エフゲニア選手の4回転サルコウ、いつか見られるといいですね。4回転を跳ばないとどうしても点数で置いて行かれてしまう、ていうのは、スポーツとしては興奮しますが、フィギュアスケートそのものとしては、それで決まってしまうのはどうなのかなとも思います…。ただ、出来る選手はもちろん試合でやりたいでしょうから、それを止める事は出来ないですね。これからどうなるのか、女子は興味深いです。