TSLさんのYouTubeチャンネルより、元国際審判ジョー・インマンさんのインタビュー。⑤

パート⑤です。

D→デイヴ・リースさん

J→ジョナサン・バイヤーさん

I→ジョー・インマンさん

 

D︰貴方は表現力に関して話しています。僕達も勉強してきたものです。

紀平梨花の芸術性は今シーズンの女子シングルにおいてベストだと思いますか?

 

I:ベストだとは言えない。何故なら、それぞれの音楽に個々のものがあるから。彼女が実施する事はとても良い。全体の95%は本当に理にかなっていると感じる。取り組みについてもだ。日本の女子選手は全般的におおむね良い。私の意見ではね。

 

米国の女子選手はというと…私にとっては、小さい子(多分アリサ)は、実際なかなかだよ、表現と解釈に関しては。

 

D:ブレディは本当にあまりセカンドマークが良くないですね。

 

I:彼女はよく練習する。

 

D︰練習。とても答えとしては良い言い方ですね。非常にそつない答えです。僕は感銘を受けましたよ。

 

J︰僕は若い選手たちに関してまた他の事で好奇心があります。ブレディのような選手の事を話す時、我々が良く見ているものは、振付師との作業です。そうではないですか?

特に、ある振付師と長く関わって仕事をしている時に、彼らは頻繁にその様子を使うんです。

そこで貴方が振付の点数を見る時に、どれくらいの…。例えばローリーのような人なら、おそらく物凄い桁のドルを支払うでしょう。他の人々と比べれば。

そういったスケーターと振付師をどうやって分けて採点しますか?とある振付師に雇用されるか、されないか、の場合では。

 

I︰そうだね…、膨大なドルがかかる人々は他にもいる。ただ何があるのか、それを見るだけだよ。審判はスケーターが何を見せているのか、を見なければならない。或る人が描く事への考え方を、スケーティングで出来るのかどうか。

 

審判が芸術の構想をジャンプ無しに見る時、考え方を本当に理解できるものだよ。氷上に何があるべきなのか、という考えをね。

そしてジャンプが加わったものを見る時、演じているが、その考えを省いてしまう。すると審判はどこに問題があるのかがハッキリと分かるんだ。多分それこそが練習やリハーサルで色々見る事の問題点だ。つまりね、それは状況の一部に過ぎないんだ。

 

D︰他の状況の場合はどうでしょうか。例えばエヴァン・ライサチェックが滑った時です。すごくエヴァンの魅力を引き出すプログラムをローリーが創り上げた事が見えるんです。彼は特に芸術的なスケーターではありませんでした。しばしば彼が音楽の最後までスケートをしているように見える事があります。でも、多分そこでやるべき動きをただやっているだけ、という感じです。

なんて言うか、謎めいてますけど。

 

I︰あれはまさに音楽のサビの部分を見つける作業と、それに合わせた動きを作ったものだ。そして彼はそういった部分を実施する事が出来た。

そうだね、彼は音楽を通して最後まで滑っていた。一般的にだが、悪い演技が最後には情熱的なものへと姿を変えた。彼は客席からエネルギーを得ていた。そして事実として、彼はクリーンに滑ったんだ。私は、その事が別のレベルへと導いたと考えている。品が無いと感じるものではなかった、とは言えないけれど。

あのような演技が採点を引き出すものだよ。プルシェンコの演技を見ると、同じ事を繰り返し

ているだけだった。振付は沢山あった。ステップシークエンスで、彼はその中で生きていた。だがそれだけだ。

 

D︰プルシェンコは美しい4回転を跳びます。

 

I︰時を遡って2006年の世界選手権を見てみなさい。もしそこに何か理にかなった動きがあれば、私に言ってごらん。どんな動きの多様性があるのか。

プルシェンコは早い音楽からエネルギーを上げて行く。テンポは早くないよ。16分音符で書かれたものだよ。とても早い。グワーッという感じにやるんだ。そこから力を得ていた。私にとってはまぁ…興味深いものだね。

 

D︰僕にとってのその他のジョー・インマンの瞬間といえば、バンクーバー五輪の前です。報道陣は走り回るような1日を迎えました。何故なら、貴方はプルシェンコをどう評価するのか、についてのEメールを送信したのです。ところが、ある審判員の片割れが僕に言ったんです。貴方は頻繁にEメールを送信していた、貴方の意見を支持するように、と。ロシアのメディアはこの事実を色々と、まぁ、小細工して伝えましたけど。

 

I︰実際その話題はフランス連盟会長が持ち出してきた。

 

J︰ディディエですよ!

 

I︰フランスの雑誌に記事が出た。私が言った事というのは、その時に戻って思い返すと…意訳して言うけど、基本的に短いものだよ。

「ワオ、このコメントを見てください。彼らは自分たちのスケーティングについて、良く知っているようです」

 

D︰真実ですね。選手たちは知っていなければ。

 

I︰私は、彼は酷いスケーターだ、一体どうなってるんだ、なんて言っていないよ。私が言ったのは、彼ら(多分ディディエ氏とプルシェンコさん、)の二人ともが言っていたけど、私は自分が言ったとさえ思っていないけども。彼らがプルシェンコのスケーティングに関して言った事を見てご覧なさい。

プルシェンコは、「僕は'' 技のつなぎ" をやっていない。ライサチェックも" 技のつなぎ" をやっていない。どうして彼の演技構成点が僕よりも高いのか分からない。" 技のつなぎ"に関しては。」

と言ったんだよ。

 

D︰エヴァンの方が "技のつなぎ" は多くやっていたと思いますが。

 

J︰そうですよ。彼らが"技のつなぎ" とは実際どういったものなのかを理解してないと、貴方は驚くでしょう。本気とは思えない。エヴァンは沢山やっていたのだから。

 

I︰正直に言うと、その単語は私とローリーが望んだものではなかった。ISUがただその単語に決めただけだよ。

 

D︰どのように作り上げたのですか?つまり、どうやって選び取って、作ったのか…

 

I︰どのように始まったのか、から行こうか。ISUが私とチャーリー(・シール。米国の審判員)に電話をかけて、言った。「私達は5つの考えがある。」と。それは基準とかではなかったんだよ。提案の要点だ。

「貴方達にこれらを詳しい内容に深めて欲しい。基準を作るために。審判達はどのように物事を見たらいいのか。」と言われた。それから、「週の終わりまでに欲しい」と言ってきた。

 

(デイヴさんとジョナサンさんが笑ってしまう)

J︰たった2日でスポーツを変えろ、とは。

 

I︰ありがとう。それで、私とチャーリーはいくつか内容をまとめた。「私はこれに決めた」と言った。チャーリーは同意してくれた。

私達はこれを提出しよう、と決めた。もし彼らが、ローリー・ニコルと私に内容を深く発展させる事をやらせてくれるのならば。私達が学んできた音楽の背景から、理にかなったものにする事を。ローリーの音楽を掘り下げる仕事や、彼女の意見、振付師としてだったり、彼女の学んだ事、そういった背景だ。

そしてそれは…誰だったか、当時の委員会の会長は…ラケルニクだ。

 

D︰数学者の、ですね。

 

I︰彼はただイエス、イエス。やろうじゃないか、と。そしてセミナーへ行った。私は今でもローリーに聞く必要があるんだ。そしたら、ローリーと私の書いた案で口論があった。

 

「どうしたらそんな風に言えるのか、私はローリーに、すごく早く仕上げないといけないと言ったんですよ。」と私が言ったら、

彼らは「全然理にかなってないじゃないか」「彼らはいつも他の業務があるから」と。

そして私は、「OK。意見を出して下さい。貴方の口から意見を出して。もしかして頭を使った事がないんですか」と言ったんだ。

 

それから「私は貴方達に私と一緒に仕事をして欲しかった。基準の元で、重大な事へ発展させるために。その内容は永遠に後世へと続くものに出来たでしょう。」と言ったよ。

彼らがその内容を気に入らない限りは、ね。審判員たちは理解できなくて、よりシンプルなものへと変えた。それは、私の意見ではより難しいものになってしまったと思うがね。

 

それからローリーと私は6週間、その事に取り組んだ。毎晩何時間も使ってやっていた。そしてそれを私達は委員会へとコンピューターで送信した。そして、別の適切なものへ変えた。私は18回も適切な変更をしたよ。私は混乱したものだよ、どの変更点に今取り組んでいるのか、という事にね。

そしておかしな事に、「よし、全部白紙に戻して、また幾つか変更しよう」と私は言った。

私達は元々、本当に良い説明をしていたんだ。かつてのISU側に沿ってね。演技構成点と、その解説だよ。それが私達が元々やっていたものだ。

 

私達はミュンヘンへ行って、世界中から人々がミュンヘンへ来ていた。そこで議論をしたんだ。彼らはそこで一語、二語と言葉を減らしたがった。それぞれ、私達が何時間もかけたものだ。私達は「OK」と言った。それから全くもって大変な議論が始まった。

私達はジャネット・リンを一つの例として使った。そしたらスイスの審判員がこう言った。「何故そんな古いものを使うんだ。彼女は古いよ。昔のスケーティングだ」と。

新しいスケーティングとは何なのか?私は言ったよ。

「彼女は世界一の、過去最高のスケーティングの持ち主ですよ」と。彼女のフィギュアを見なさい。フィギュアスケーターとしてのフィギュアを。彼女の動きを見なさい。いくつかのプログラムも見なさい。

まぁとにかく、私はアレキサンダーラケルニクに任せた。それで終わった。

 

その後、私はハーグに行った。世界ジュニアか何かがあって私は審判をしていた。そこにラケルニクがいて、「ラケルニクが来てたのか」と言った。そしたら彼は私を掴んできたんだ。

私はこう言った。「元気にしているよ、ありがとう。もし貴方達があの案を使うつもりなら、知らせて欲しい」と。

そしたら即座に、まさに次の日に、「私達はあの案を使うつもりでいる」と言ってきた。私は「読んだんですね」と言った。彼は棄権したようだったね。それで終わりだ。我々を信用したようだよ。

そういう感じに全てが決まって行った。

 

彼らは二人を使ったんだ。十分に賢い人々だ。私は「自分自身が、彼らがそういう事に使う最適の人間」だとか言ってるんじゃない。でも真実として、私はスケーティングにおいて音楽を理由づけられる唯一の人間だった。音楽の局面を引き出す事が出来た。

私はダンスについても理解があった。イリノイ大学で四年間、モダンダンスを学んだから。私は芸術や動きに関する事が大好きだったからね。ローリーも同様だ。私とローリーはとても相性が良かった。音楽の理解とか、色々。

 

私はローリーに対しても「意味をなさない、理にかなってない」と言ったことがある。ローリーは怒ったりしない。「OK。何故でしょうか」と言うんだ。それで私が伝えて、彼女はいくつか変更をする。

まぁとにかくね、常にそんな感じだった。つまらない話をしたね。

 

J︰そんな事はないですよ。何故なら多くの人は要素が一体何なのか、を知らないと思いますから。何がまさにその場で起きたのか、というのもそうですね。ミュンヘンの会議室にいる事は、おそらく凄く面白かったでしょうね。

まさに、悪夢だったでしょう。

 

続く…。