2012年の羽生結弦選手が過去やスケートについて語っていたものです。③終

前回の続き、3回に分けたブログの最後になります。

羽生結弦選手がカナダへ拠点を移した頃の事、その先に当時思い描いていた事、などが語られていきます。

少しだけ最後に質問→羽生選手の答え、という形がありますが、2012年スケートアメリカエキシビションの時に行われたもののようです。

アブソルート・スケーティングさんの元記事は

こちら

です。

 

I→質問者

Y→羽生結弦選手

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羽生結弦︰過去、現在、そして未来】③

・前回のブログの続きです。

 

『現在』

今シーズンは結弦にとって重要だ。オリンピック熱が上がる1年前のシーズンだから、というだけではない。今年は、彼にとって常に最も影響を与えていた2人のスケーター達と、ついに同じ氷上に乗る最初の年になるかもしれないのだ。エフゲニー・プルシェンコジョニー・ウィアー。彼はエフゲニーと沢山のショーに出ていた事があり、ジョニーには2010-2011シーズンの衣装をデザインしてもらった事もあるが、彼らと試合をするのは同じ事ではない。

結弦の今シーズン最初の試合はフィンランディア・トロフィーだった。彼はショートの4回転で転倒したが、素晴らしいフリーを滑った。堂々たる勝利であった。だがフリーの後に、彼は突然氷上に倒れ込んでしまった。疲弊していた。その後伝えられた所では、彼は3月に怪我をした足首にまだ痛みがあったと言う。そしてシーズンが変わってから彼の喘息が悪化した。この事により、彼は全く体型が調整できず、多くの体重を落としてしまっていた。フィンランディア杯で競技に出た時は、新しい衣装を着るには痩せすぎていたほどだ。その時には衣装が大き過ぎた。

「僕は、自分が出来る全てのために最大限の努力をしようとするスケーターだと思います。攻撃的に自分自身の背中を押します。」

彼は自分の事をそのように本の中で表現していた。そして私達はそれぞれ、毎回どの試合でもそんな彼を見ている。

 

数週間後、スケートアメリカでは身体の調整がずっと良くなっているように見えた。シーズン最初のグランプリ戦で、ショートプログラムで世界最高得点を取った。不運にもフリーでもう一度成功する事は出来ず、3度の転倒があり総合では2位となった。彼にはまだグランプリ・ファイナルへ進出する良い機会があり、彼はシーズン最後のグランプリ戦、NHK杯でそれをやってのけた。ショート(クリーンな4回転トゥループと、僅かに世界最高得点を更新した)とフリー(こちらでもクリーンな4回転トゥループと、グラついたがしっかり回転した4回転サルコウをやった)、どちらでも勝利した。

スケートアメリカ・ガラでの結弦のエネルギッシュなエキシビション・ナンバーの後に、彼は裏側へ戻ってきた。まだ息が上がっていたが興奮していた。数人の日本人の子供達が彼にサインを頼みに裏側のカーテンに来た時には、彼は座って、チームメンバーと表情豊かに話していた。結弦は即座に立ち上がったものの、その時に彼は片足にスケート靴、片足は靴下という状態だった。彼は床に膝をついて(実際、片方だけスケート靴で立つのはなかなか難しい)、ノートやアルバム、写真にサインをし始めた。その少し後に、結弦は私達の質問に答える事を了承した。ガラの最終グループナンバーに行くための準備をしている間の事だ。

 

I︰通常の1日がどのようなものか教えて下さい。氷上で、オフアイスで誰と取り組んでいるのか、スケートのレッスンと休憩の間はどのように貴方の時間が分けられているのか?

 

Y︰そうですね、僕はまだ上手く英語が話せないので、カナダでの生活に合わせるのはなかなか難しいことです。でもトレーニングをとても楽しんでいます。氷上ではブライアン・オーサーさんとトレイシー・ウィルソンさんと取り組みます。オフアイス・トレーニングでは僕のバレエ・インストラクターと共に行います。毎日3〜4時間はスケートを滑ります。バレエのレッスンは1時間から1時間半です。とても楽しんでいますし、すごく頑張ってやっています。カナダでのトレーニングは僕のスケートを沢山成長させると思います。

 

I︰貴方のカナダへの移動に関して、最も気に入った事とは何ですか?氷上でも、オフアイスでも。

 

Y︰カナダでのトレーニングで僕が最も気に入った事は、あちこちにアイスリンクが沢山あり、指導スタッフが沢山いるという事実です。彼らから違う事を学べます。

オフアイスについては…(時間を取り考えて)、よく分かりません。家族が恋しいです…。

 

I︰準備のルーティーンで変わった事は何ですか?

 

Y︰今、僕はより良い環境でトレーニングをしています。以前よりも氷上での時間が沢山取れます。仙台で練習していた頃は、地震などによって十分な氷上の時間が取れませんでした。僕は1日に1〜2時間くらい氷上で練習していました。今は1日に3〜4時間です。充実した、適切な練習をやっていると思います。

 

I︰英語は上達しました?

 

Y︰(笑)そう願います。英語でのコミュニケーションは僕にとってすごく大変な事です。もっと英語を頑張って上達させたいです。そうしたらブライアンとも、もっとすんなりとコミュニケーションが出来ます。

 

I︰今シーズンの貴方のプログラムについては、いかがですか。その背景にあるアイデア、音楽など…

 

Y︰僕の振付師がどちらのプログラムの曲も選びました。ショートの音楽(ゲイリー・ムーアの"パリの散歩道")はスケートを滑るのにはとても難しいです。でもここスケートアメリカで良い演技が出来ました。フリーの音楽(リチャード・コッチャンテの"ノートルダ厶・ド・パリ")もとても難しく、感情的なものです。これは僕にとって表現するのが簡単ではありません。音楽解釈のスキルを上手く成長させなければならないです。

 

I︰一緒に仕事をする、貴方のプログラムを創り上げる振付師を誰が決めたのでしょうか?

 

Y︰ブライアンが3人の振付師を僕に選んでくれました(ジェフリー・バトル、デイビッド・ウィルソン、カート・ブラウニング)。彼が信頼している人達であり、僕に選んでくれたんです。彼らが僕のために創るプログラムを、上手く演じたいです。

 

I︰最初の試合をどう評価しますか?フィンランディア杯、そして今はスケートアメリカです。

 

Y︰フィンランディア杯では、僕はフリーを上手く滑り、ショートは良くありませんでした。そして今は真逆です。素晴らしいショートと、悪いフリーです。僕は2つ良いプログラムを揃える事ができないでいますから、競技会で2つのクリーンなプログラムを滑るために、もっと練習を頑張りたいです。

 

I︰来年には貴方は高校を卒業しますね。大学で何を学びたいですか?

 

Y︰人間に関する要素について学びたいです。人間が身体的にどのように動くのかについての勉強です。僕はスポーツと人間の身体にとても興味があります。大学ではそれを専攻したいです。

 

『未来』

近々、結弦は五輪が執り行われる会場で競技をする予定だ。今年のグランプリ・ファイナルはロシアのソチで行われる。その後に、彼は全日本選手権への挑戦に直面する。それまでよりも激しい戦いとなるだろう。5〜6人のスケーター(その内の4人はグランプリ・ファイナルに進出)が世界大会のチームに入るために、たった3枚の切符を争うのだ。何が起こるのか分からない。私達に出来る事は彼に幸運を祈る事と、そこで素晴らしい演技をする事だ。

 

フィギュアスケートが僕にとって意味するもの…そうですね、まず第一に、僕達はスケートを楽しんでいます。それから一生懸命に練習します。試合で勝ちたいからです。どちらの場合でも、僕達にとって良い結果につながるためにスケートを続けているんです。でも僕達の演技は観客の皆さんに何かを感じさせます。フィギュアスケートには魔法の力があると思います。全然知らない誰かが、''貴方の演技に感銘を受けた"とか、"貴方の演技に元気づけられた"とか言っているのを聞いたりするんです。それはこのスポーツの素晴らしい所です…。

そういう、僕を応援してくれる人達のために、僕はスケートができます。でもそこから遠く離れた所に来た時、ライバルだったり地震だったり、トレーニングの状況や、試合に勝ったり負けたり、それは問題ではありません。それは自分自身に挑戦しているんです。自分のために目標を設置して、それに向かって進む…。

僕は成長の余地がまだ沢山ある事が嬉しいです。はい、多くの事をやらないといけません。それはつまり、もっと頑張って練習して、強くなるという事です。僕はこの考えを持ち続けて、もっと練習を頑張ります。五輪で金メダルを取るまで。」

 

五輪はすぐそこまで迫っている。私達は今、彼の現在と過去だけしか見る事はできない。そして羽生結弦にどんな未来がやって来るのだろうかと、思いを巡らすのである。

 

終。

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2012年の羽生選手の記事でした。震災の部分などとても辛い内容もありましたが、カナダへ拠点を移した頃を色々と懐かしく思い出したりしました。

この記事のスケートアメリカでのショート、95点という点数は本当に衝撃的で…羽生選手も「衝撃的だった」とインタビューで後に語っていたと思いますが、本当に本当に驚きました。85点の間違いじゃないよね?とか思ったりしたものです。当時はまだ90点を超えるだけで驚きの点数でしたから。

そしてその後にソチ五輪チャンピオンになるとは、見ている私達は夢にも思っていないと言いますか、そこまで一気に駆け上がるとは…。カナダに行ってからの羽生選手のスケートは見た目からしてすごくスムーズになったのが分かるくらい、なんと言うかジャンプとか…元々綺麗だったものが更に軽く見えると言いますか。そんな凄さがあり、見ながら興奮したものです。

そしてソチ五輪で金メダル、平昌五輪でも金メダルを取ったんですね…数年前なのに、不思議な気持ちになります。

 

今シーズンの羽生選手のプログラムはまだ分かりませんが、どんなものになるのか楽しみに待ちたいと思います。こんな素敵なスケーターの演技をリアルタイムで応援できるとは、なんて幸せなんでしょう。羽生選手が練習に集中出来ていますように。そしてカナダの拠点に戻れる日が、早く来ますように…。