エテリコーチのグループの陸上ダンスの振付師アレクセイ・ゼレズニャコフさんのインタビュー②

前回の続きです。なかなか長いインタビューですが、スケートの直接的な指導者ではない人のインタビューって珍しいなと思い、頑張りました。長いので3つに分けます。今回は②です。

①はこちら↓です。

canacraneko.hatenablog.com

 

英訳された記事はこちらです。

ロシア語→英語→日本語です。

I→質問者

A→アレクセイ・ゼレズニャコフさん

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【アレクセイ・ゼレズニャコフ︰7歳の少女がカルメンで滑る時、それは私を押し潰します。】

 

(後半です)

I︰もしプログラムが議論されていれば、その時は成功するでしょうか?

 

A︰いつもでは無いですね。人々が「あれは何だろう?」と議論している時に起きます。悪いPRもまたPRとなります。何かしらのナンセンスなものを起こし、そして誇大広告を得ます。しかし世界に熱狂的なより良いエキシビションプログラムの議論をさせようではありませんか。

 

I︰トゥクタミシェワは、彼女の"トキシック"という珍しいプログラム選択をフィギュアスケートの大衆化の方法として説明しました。これは良い決断ですか、それとも悪いPRですか?

 

A︰彼女は良い誇大広告を得ました!しかし全てには尺度があるべきです。文化、審美学において。このケースでは、彼女はわずかに一線を超えました。人はプタナ(インドの神話に登場する)やストリッパーでさえプログラムでやれますが、気をつけて、巧みにやらないと。一線を超えずに。彼女はあのエキシビションプログラムと共に、リーザは世界中を彼女の話題で持ち切りにしました。アイデアそのものは良いのです。しかし振付師はもっと上品に実施するやり方をトゥクタミシェワに説明すべきでした。スタイリッシュに見せるために。

 

I︰プルシェンコの衣類を脱ぐプログラムは良い方向に行きましたか?

 

A︰あれにはユーモアがありました。そして全員がそのように受け取ったのです。もし彼が本当にジーストリング(ストリッパー)のように脱いでいたら、人々の反応は困惑したものになった事でしょう。でも彼は筋肉が沢山あるフォームコスチュームを着ていました。あれは可笑しかった。彼のプログラムはカート・ブラウニングの"ピエロ"を思い出させました。人は下品な一線を超えてはいけないのです。もしプログラムのアイデアがエロティックなら、何かしらの"おもむき"と共に表現する必要があります。

 

I︰誰と仕事をするのが最も興味深いですか?

 

A︰振付師としては、上手く動く選手達と仕事をするのが楽しいです。彼らとなら狂ったように出来ますから。良いやり方で、ダンスホールにて並外れた何かが出来ます。

トゥトゥべリーゼのグループのベテラン達との仕事は良い事です。私が既に良く知った人達です。彼らが子供時代からずっと仕事をしてきて、優れた見方を持つ者たちのレベルに到達したのです。彼らはどんなスタイルでも素晴らしく踊れて、なかなか優れています。もちろん彼らをプロのダンサー達とは比べられません。しかしスケーターとしては、彼らはとても上手く動きます。彼らのために様々なプログラムが出来ます。エキシビションで創造的に出来るのです。

私はジェーニャ・メドベージェワと取り組むのがとても好きでした…彼女が私達の所を離れたのは残念です。でもこれは彼女の選択です。宿命なのです。私は彼女の決断を議論したり強く非難したりはしません。モリスと取り組む事は常に興味深いです。新たなスタイルを学ぶのです。

子供達は皆クールです。彼らは皆が独自のものを持ちます。私は個別に取り掛かろうと努めます。どんなスケーターでも興味深いプログラムが持てるのです。彼らが踊っていて、柔軟でいる事が重要です。基礎的な事は終わりました。今は創造性の時が来ています。

子供達がストレッチから始める時、トレーニングは大変です。強さ、感情を授ける事が必要なのです。彼らに基礎的な事を説明します。芸術家としての私にとっては、そんなに面白くはありません。私は楽しさを呼ぶ創造的な過程に携わりたいです。

 

I︰リプニツカヤとの仕事は楽しかったですか?

 

A︰ユリアは本当に貴重な存在です。しかしながら、彼女は私達とそんなに長く一緒にはいませんでした。そしてアスリートとして演技をしないのです。私は私達のグループで長い年月の間トレーニングを続けている選手達と一緒にやる事が快適です。でも少しずつ、新顔達もまた成長しています。

例えば、カミラ・ワリエワです。彼女はゴージャスなバレエ的準備が整っています。私は彼女にアダージョを作りました。数少ないアスリートがこのレベルの振付を上手く対処出来ます。彼女は簡単にダンススクールに入れた事でしょう。彼女のボディタイプは、バレエのために生まれたのです。カミラはとても柔軟性があり、軽く、品があります。神に口づけを受けたのです!誰にも分かりませんが、もしフィギュアスケートでなくとも、我々は彼女の名前を聞いていたでしょう。ボリショイかマイリンスキー・バレエ劇場のプリマとしてです。より高いパワーから、熟達されたものが彼女に与えられました。そしてこれは使われなければいけない。私は彼女とクラシックなスタイルを取り組むのが好きです。しかしもしモダン動きをやったら、彼女は十分な固定されたポイントや強さ、爆発的なパワーは持たないでしょう。

 

I︰ワリエワがエテリのグループに参加する前から彼女の名前を聞いたことがありましたか?

 

A︰私はモスクヴィッチ・スケーティングリンクで教えていました。そしてトレーニングにおいてカミラに気づいていました。私は最初の動きでこの少女に気づきました。振付師として、私はそのような目を持っています。私は即座に才能ある子供を見る事が出来ます。カミラはほんの子供の年齢から人目を引く子でした。それからはまだ私は彼女と取り組む事はありませんでした。それでも私は彼女のキャリアを追っていたのです。彼女には素晴らしい将来が待っている事は明白でした。彼女は幸運です。しかし才能があるだけでは不十分です。個性が必要なのです。スポーツにおいて、最も重要な事は努力をする事です。

 

I︰エテリ・ゲオルギエヴナはカミラがクリスタルヌィに来た時に、貴方に彼女の批評を頼みました?

 

A︰エテリは非常に経験豊かですから、他人からの批評などは必要ありません。彼女は全てを見ています。技術と振付、どちらもです。ここにはプロにとって不可思議な事など全く無いんです。トゥトゥべリーゼはチームに意見を聞く必要はなく、彼女が才能と巡り合った時に、彼女自身が理解します。エテリはそのような目を持つのです。彼女はユニークな才能を見つけ出します!

 

I︰カミラは今、4回転を跳んでいます。その事から、彼女は技術と優美さのバランスの最高の例と言えますか?

 

A︰多分。しかしカミラはクラシックなやり方において上手く動きます。彼女には完璧な造形的な動きがあります。彼女には叙情的なジャズ・モダンを与える事が出来ます。ですが彼女は何かもっとダイナミックで攻撃的なものには対処出来ない事でしょう。そしてジャンプは崩れていき、そこには十分な機能的トレーニングがなくなります。サーシャ・トゥルソワが持つようなスポーツ的運動性の事です。従って、素質を飛び越えてはならないのです。どのスタイルがスケーターにとって近いのかを理解する必要があります。選手を壊すべきではなく、自然な事に逆らうべきではありません。選手が持つものを発展させる方が良く、徐々に新しい事に挑戦するのが良いでしょう。

 

I︰コストルナヤはワリエワのタイプに近いですか?

 

A︰そのように思います。しかしアリョーナはもっとダイナミックな動きができ、力強い振付が見せられます。コストルナヤは万能なスケーターですが、二人には多くの似た点があります。

 

(中略)

 

I︰サーシャ・トゥルソワに振付の必要性を説明しなければいけませんか?

 

A︰サーシャとは何の問題もありません。彼女がヴォルコフのグループで滑っていた時、私は彼女の運動能力が、柔軟性のある子供達と同じようにはスピンや滑りを上手くやるのを許さない事に気づいていました。でも彼女にダンスのトレーニングの必要性を説明する事はしなくても大丈夫です。逆に、サーシャの母親が彼女を個別指導へと連れて行きました。問題の理解と、解決への情熱があります。それから私達は結果を見るのです。サーシャは今、より踊りができて柔軟性があります。

 

I︰それでは、彼女の技術的強みを考慮するにあたり、彼女の演技構成へ取り組む気持ちを高めるやり方とは?

 

A︰貴方は4回転が彼女にどれだけの点数を与えるのかを理解しないという愚か者にならなければ。両親達もコーチ達も分かっています。それで彼女は技術に集中しているのです。そこには振付があるべきですが、内容に応じてのものです。最も難しいステップから4回転に入る事は不可能です。それから信じ難い動きを見せる事もです。4回転のための強さが残りません。そしてサーシャはプログラム中に4つか5つの4回転があります!バランスがあるべきなのです。

そして彼女はまだ若いという事を忘れないで下さい。彼女の年齢が上がっていくと、芸術的イメージと意味のある動きへの、より良い理解がある事でしょう。そしてトゥルソワのプログラムは違って見えるのです。複雑なプログラムのために成熟するには、人には時間が必要です。サーシャは彼女の弱点を理解していて、それに取り組んでいます。前進しています。彼女がもっと小さかった頃、彼女には筋肉が多すぎました。今では柔軟性が明らかに見て取れます。毎年、全てが良くなっているのです。

 

(中略)

 

I︰フィギュアスケートに良くある"ロシア的"スタイルがあります。これはどういう意味でしょう?

 

A︰まず初めに、振付への取り組みなのです。欧州出身のアスリート達はしばしば私のスタジオに来ます。そして彼らにはかなりダンスの動き、柔軟性、審美学が欠如しています。ロシアでは、西洋よりもそれをもっと真剣に扱うものです。トップアスリート達は発達していますが、実際彼らは子供時代から振付を必要とします。ナショナルチームに入ってからではなく。私達は良い振付師とダンストレーニングの欠落を見ます。

私達はシステムと作り上げられた全ての状態があります。それぞれのメジャー・スクールには専属のフルタイムの振付師がいます。彼らのレベルについては話しません。彼らは素敵な人達で、中級レベルがいますが、少なくとも彼らはそのレベルなのです。欧州ではこういう事は見ません。グループには振付師がおらず、アスリート達は海外へトレーニングキャンプへ行かねばなりません。これは私が愛国者であるかのように見せたいから言うのではなく、ここと海外のどちらでもその状態を見るからです。これは演技からも明白です。トップ選手達は今でも評判を保持して、面白い動きを見せる事が出来ます。しかし子供達やジュニア勢は私達にとってはずっと劣っているのです。

 

I︰もし我々の専門家と西洋の専門家を取ってみると、その間には同等のものがありますか?

 

A︰はい。私達は西洋の専門家達となんら劣っている事はありません。ある箇所では彼らは上回っています。しかしそういった比較は全く正しくないのです。同僚として、私は他の専門家達の仕事を議論する権利を持ちません。レベルは同じくらいであり、取り掛かりへの違いがあると言いましょう。それぞれの優れた振付師達は、彼ら独自の仕事のスタイルがあります。最初の動きから明白になるのです。アベルブフの各プログラムは見分けられます。グレイヘンガウスの各プログラムは見分けられます。これは私がプログラムを見た時に起こりましたが、誰が振付師なのかは知りませんでした。時には、誰が振り付けたのかを知るために、私には1分で十分なのです。

 

I︰今シーズン、メドベージェワは興味深い状態にありました。ショートはイリヤアベルブフによるもので、フリーはシェイ・リーン・ボーンです。1人のアスリートにとって、2つの違ったスタイルです。

 

A︰私はこのケースにおいて彼女のチームは完璧に仕事をしたと思います。最も重要な事は、彼らがジェーニャとのおかしな実験を止めた事です。ショートもフリープログラムもどちらも叙情的です。それはジェーニャが常に最善の事を見せるものです。エテリの元を離れる前に、彼女は殆どいつもそのスタイルで滑っていました。それから、彼女が離れてからすぐに、彼らは彼女に遊び心のあるジャズを与えました。そしてそのプログラムは上手くいかなかった。その後にミーシャ・ジーが上品で叙情的なプログラムを作り、奇跡が起こりました。ジェーニャは要素をやり始めたのです!全ては明らかです。仕事のやり方を壊さない事。もしかするとジャズのプログラムは良いかもしれませんが、ジェーニャには合いませんでした。

 

I︰もう一方で、もしスケーターが安定して同じスタイルで滑っていたら、どこに成長がありますか?時には心地よい場所から離れる事に価値があります。

 

A︰スケーターが多才であれば成長する必要があります。しかし再度言いますが、この成長は段階を踏むべきで、結果に対して有害であるべきでは無いのです。挑戦して、上手く行かなかった。そうしたら来年まで持ち越しです。もう一度挑戦してみる、今はそれが良くなっている。今、スケーターは新しいスタイルでやる事が出来ます。アスリートにダンスの準備がある時は、機能的に良く準備が整っています。そこに技術の問題はありません。そうしたら実験が出来ます。しかし、ある人が準備ができていないなら、頭の上でジャンプを試みるようなものです。

 

I︰「成熟した女性のスケーティング」について話しましょう。それはアスリートの振付的能力の発展となるのでしょうか?

 

A︰子供達と大人の間の振付の違いは複雑です。小さな子供達とは、私は基礎的なものから始めます。彼らが成長したら、もっと躍動的な動きを与える事が出来ます。複雑な芸術的イメージを彼らは理解し始めます。精神的に成熟した年齢にのみ、もたらされる事が出来るイメージというものがあります。私が7歳の子供がアルゼンチン・タンゴやカルメンで滑る所を見る時、それは私を押し潰します。彼らは成熟した年齢で演技される必要のある大人のテーマをやっているのです。さもなければ、馬鹿らしく見えます。

 

I︰あるインタビューで、エフゲニア・メドベージェワは数年間メモリーズ・オブ・ゲイシャを演じるというアイデアがあったと語りました。しかし今となってだけ精神的にその準備が出来るようになったのだと。彼女は正しい瞬間を待っていたのでしょうか?

 

A︰付け加えると、私はこの会話を覚えています。数シーズン前にジェーニャはメモリーズ・オブ・ゲイシャで滑るというオプションを考慮していました。そして、彼らはそれを拒否しました。何故ならジェーニャ自身とコーチ達が、彼女はまだ準備が出来ていないと決めたからです。そしてそれは正しかった。今、彼女は成熟した女の子です。彼女は氷上で何を見せているのかを理解し、感じています。このストーリーの悲劇をまだ理解していない、青年期において"メモリーズ・オブ・ゲイシャ"を上手く滑る事は可能ではありません。今、彼女は準備が出来ています。だからこそプログラムはゴージャスに見えるのです。

 

I︰この点において、女子シングルの年齢制限の引き上げに関する多くの話や提案があります。貴方のご意見は?

 

A︰私はイメージについて話しました。年齢制限には反対です。発展の止め方?フィギュアスケートは、新体操と同様に若い人向きのスポーツです。それで何故人工的にアスリートを成長する事から妨げるのでしょう?時々はアスリートに怪我をさせないための熱情を持ち続ける事は価値ある事です。しかし我々のコーチは教養ある人々です。彼らはウルトラCの要素を、準備が整った子供達にだけやります。そして子供達の準備が出来ているのなら、何故シニアで競技したり難しいジャンプをする事を禁止されるべきなのです?これは人工的バリアです。

女子シングルスケーティングは今、迅速に発達しています。電車はフルスピードで進んでいて、年齢を上げる事は停止するクレーンを引っ張りだすようなものです。電車は単純に倒壊するでしょう。きっとこのアイデア国際スケート連盟、そして我々の競技者達から出てきたものです。明らかに、ロシアのフィギュアスケートでの優勢には全員が既にうんざりしています。それでスポーツ高官は、どうやってこれを変えるのか、を考えているのです。

 

I︰アーニャ・シチェルバコワは今シーズン、彼女の年齢には難しいイメージのものをやりました。映画「パフューム」からの音楽です。彼女はこのストーリーを見せるために、精神的に準備が出来ていたのですか?

 

A︰アーニャはそんなに小さくありません。彼女は映画を見て、本を読み、全てを理解したと思います。子供達は今、全てを素早く掴み取ります。ここにラインがあります。それは年齢にそぐわないイメージがある時に、超えてはいけないラインです。シチェルバコワには卓越したプログラムがあり、彼女は氷上でこのアイデアを素晴らしく表現します。もしかすると20歳で彼女はもっと上手く滑る事があるでしょう。全ては経験から来るものです。

 

(続きます)

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2つに分けて終わらせようと思いましたが、めちゃんこ長いので(;・∀・)

更に3つに分けたいと思います。

次が最後です。