ニーナ・モーザー コーチが現在のフィギュアスケート、エテリコーチ等について語っています。

ロシアのペアの著名なコーチ、ニーナ・モーザーコーチがフィギュアスケートについて、色々な質問に答えています。少し以前よりは表舞台に出ることがなくなりましたが、今のフィギュアスケートに関して語られたインタビューです。メディアやファンからの声についても語られていました。

 

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ロシア語→英語→日本語です。

 

I→質問者

N→ニーナ・モーザーコーチ

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【ニーナ・モーザー︰私の大好きなスポーツはロボット工学へと変えられるべきではない。】

 

(前略)

 

I︰私達はまた貴方がボード脇に立っている姿を見る事になるでしょうか?

 

N︰指導は私の職業です。とても愛していますし、1から10まで知っています。戻る事を確かに計画しています。でも今起こっている事は…混沌と汚泥の雰囲気の中で働くのは不快なものです。今の所、ウラジスラフ・ゾフニルスキー、アリーナ・ウシャコワ、そしてフィリプ・タラソフと一緒に、イタリアでの五輪に行けるジュニアペアの準備に集中しています。中国での五輪後の変更を待ちます。改正が必要だと理解しています。今は全員と専門的に話す事は可能ではありません。この形態では、何が必要なのかを説明するのは大変です。フィギュアスケートそのものにおいて、全てがすぐに変わる事を願います。

 

I︰連盟は貴方のトレーニングにとって快適な状況を作り出すべきでしょうか?

 

N︰連盟だけではありません。連盟とは全ての事に責任を取る能力を持たない、公式の組織です。これは重大な仕事で、不運にも今は殆ど誰も知らないのです。スポーツ省であり、地方組織です。私は、私が変えたいと願う物事が変わる事を、望みと共に待っています。ですから自分達の仕事をして、良い結果を見せる事は可能でした。簡単な例では、アスリートに競技会への準備をしていて、全てを計算しているのです。私達のスポーツは共同作用するスポーツで、全ての要因を考慮する事はとても重要です。そして、ある公的組織は人に間違った時間の飛行機のチケットを取ります。何故ならその方が安いからです。結果として、そういった微妙な違いは計画を壊してしまいます。睡眠の不足をどのように補うのか、と考え始めます。どのようにトレーニングのスケジュールを変えるのか。到着したら氷上へ行って、ベストなスケーティングと要素を見せる必要があるのです。審判達は観客席に座り、初めの1分間から全てを評価します…アスリートは緊張を感じ始めます。コーチは、緊張とは無駄なものですが、出来る事は何もありません。そして、そこには多くの組織の問題があります。

 

I:フィギュアスケートにとって、どんな変化が待っていますか?

 

N:競技会のシステムとスコアは改正されています。要求される要素と演技構成は調整されるでしょう。今はフィギュアスケートそのものは背景へと消え去りました。数学的アプローチだけが残された仕事です。貴方がどれほどスケーティングにおいて熟練であるのか、どれほど芸術性があるのか、プログラムが美しいかどうか、は関係ありません。主要な事はどれほど全てをクリーンに演じたのかです。現在では傑出したスケーターでさえ、技術的要素の特有なセットをやらなかったら、ジャンプが出来てほとんど滑りが出来ない人達よりも低くなるのです。これは私からすると非常に興味深いです。同じ年に、私はこのようなシステムから警告を受けました。そして今年、私は確信されられました。他の時を待つ方が良いという事に。関心を引き上げる必要性があります。技術的側面ではなく、一般的に言ってフィギュアスケートそのものです。私の大好きなスポーツはロボット工学的になるべきではありません。

 

I:フィギュアスケートはロボットのスポーツに変わっていますか?

 

N:技術的な見方をすると、そうです。私はスケーター達に同じ技術的内容で残って欲しいと思います。貴方が我が国の少女達の事を暗に示している事は分かっています。それから多くの人が私が示す言葉の方向へ向かうという事も。でも私は少女達の話をしているのではありません。彼女達は素晴らしいです。トゥトゥベリーゼのチームは、とても巧みに、効率的に仕事をやっているチームです。彼らが緊張を失った時でさえ、中立の立場を保つために自分達を抑制しないといけないとは、同情します。最後には、不運にも、起きる事が起きるのです。

 

(中略)

 

I︰私にはトゥトゥベリーゼは思春期に入った女子選手にあまり興味が無い、という印象があります。やはり、彼女達と仕事をするのは難しいのでしょうか…

 

N:貴方の意見は確実に間違いです。コーチの視点からすると、ある人々が順を追って成長している状況を誤解していると言えます。これはエテリや他のコーチの事でないです。システムに関してです。国際スケート連盟は最も複雑化した要素の実施への要求を高め、競技会のルールは変わりました。従ってこのような衝突が起きます。貴方の言う通りです。17歳という年齢で女子は思春期を迎えます。体重は増えて、急激に成長し、そして身体は変わります。回復し、新しい身体に慣れ、以前やっていたような練習を続けるためには、この時期を終えるのを待つ必要があります。信じて下さい。特定の子供がどのように思春期を終えるのか、誰にも分かりません。当然ながら私達は両親達を見て、小さな子供達を受け入れようとします。ですが最後には、全ては全く予期せぬ事のように起こるのです。人が成長し始めると要素は止まり始め、多回転のジャンプは回転不足になります。精神的に生き残る事が難しいです。つまり昨日には貴方は全てを完璧に出来て勝っていたのに、今では全てが過ぎ去るのを待たなければならない、そのように見えるのです。全員が十分な忍耐を持ち合わせているのではありません。でもどういう訳か、その全てに関して責められるのはコーチなのです…。

確かに言える事は、エテリは舞台裏のゲーム抜きで最強である者に、最強のものを与えるのです。彼女にお気に入りというのはいません。非常に大きなグループが彼女の指導下で仕事をし、子供達と共に始まるからです。その中で最も強い者が勝ちます。スポーツ主義が常に第一であるべきです。繰り返しますが、私は何故この話題が多くの人を悩ますのか理解しています。ところがフィギュアスケートにおいては、いつも殆どがそのような感じになるのです。思春期に差し掛かる前の少女達が結果を得て、そして全てに勝つ。それから小休止があり、皆が忍耐の期間を通って行きます。スルツカヤもそうでした。ブッテルスカヤもです。新しい身体に順応するまでに2年かかりました。彼女達は数年間にわたり取り組み、回復して以前のレベルに戻ったのです。現在ではこの状況は単純に悪化したものに変わりました。フィギュアスケートで要求されるものが非常に高くなったからです。

これは皮肉ですが、若い米国人の女子選手がリードしている時、誰も金切り声を上げたりはしなかったのです。タラ・リピンスキーやサーシャ・コーエンサラ・ヒューズらは15、6歳でチャンピオンになりました。そして何もかもが平静で、平和的だったのです。それが普通であるかのように。そして今、人々はこの事に叫び声を上げます。もし私がライバルなら、彼女達の成功を羨む事を理解するでしょう。しかし騒音や否定的な意見がロシアから出てきます。テレビの"アイス・エイジ"を十分に見てきた所からすると、私達は審判になるという事を学ぶと決めて、そしてコメントをします。スポーツと元々のスケートのラインはぼやけてしまいました。私達はこの年齢の問題と共に、自分達を行き止まりへと走らせたのです。そこにあるのは中傷、ゴシップ、悪口だけ…不快です!

 

I:まさに。ルールがコーチ達に、思春期の前の少女達を最大限まで使い果たす事を後押しをさせるのでしょうか?

 

N:スケーター達に要求する物があります。競技会にはルールがあります。スポーツの技術的側面があります。今は、勝つために、複雑なプログラムを完璧にやらなければいけません。他のスクール出身の子供達は"クリスタルヌィ"へと行きます。でも私達は3歳から準備している少年少女達を絶対に忘れてはいけないのです。素晴らしい専門家達がいる、とても大きなスクールがあります。従って、ISUの要求に上手く対処する事が出来る子供達を選ぶ事は可能です。しかし「エテリは仕事をしない。才能ある人だけを受け入れる」と言う人達は、彼らは嘘をついています。エテリはリンクに住みついているのです。

 

I︰事実と共に議論するのは難しいものです。エテリ・ゲオルギエヴナの全ての生徒達は17歳で彼女の元を去りました。

 

N︰何故なら彼らは待ちたくは無かったからです。彼らは以前には勝利者、チャンピオンでありました。そしてこのような強いチームの中で、客観的な理由としては、その選手は最も強い選手ではいられない。多分最も弱い選手にさえなり得るのです。全てを非難し、より若いスケーターに演技をさせる事を可能にしているのはコーチのように見えます。人間的には、少女達がそういった羨む気持ちを持つのは理解されるものです。これは答えるのが難しい質問です。

例をあげてみましょう。今私達はハイ・テクノロジーの世界に住んでいます。世界中とコミュニケーションを取って…私は貴方とスカイプやWhatsAppでは話をしたくないと言えます。古い電話で話そうではありませんか。何故ならもっと快適さを感じますから。貴方はワイヤーと装備されたボタンのあるアイフォンの最近のモデルチェンジに同意していますか?私は全く同意しません。時間を維持して行きたいからです。

スポーツも同様です。世界は立ち止まりません。チャンスと能力が先に行きます。スタイルは変わっています。振付は…ベストになるためには、変える必要があります。そしていつも新しいチャンピオンが出てきます。

 

I︰少女達が待ちたくはない、という貴方のご意見に私は同意します。もしそうでなければ、例えばエフゲニア・メドベージェワですが、彼女は別のコーチの所へ行って、勝利する事なくスケーティングを楽しみ続けています。

 

N︰またしても、貴方はテレビで話している人の話を聞いています。ジェーニャは素晴らしい同僚です。この点において、彼女は我々の傑出したスケーター達に似ています。戻ってきて、そして既に成熟した年齢にありながら結果を出し始めたスケーター達です。もしかするとジェーニャは彼女の瞬間を待っているのでしょう。結局の所、フィギュアスケートは中国の五輪の後にまた変わります。他の要求が現れて、全てが変わるかもしれません。彼女も含めて。

 

(中略)

 

I︰フィギュアスケートはどのように発展していくのでしょうか?

 

N︰ISUがどの方向性を選ぶのかを見ましょう。推測はしたくないです。私はジュニアのペアとより多く仕事をしています。マスタークラスに参加しました。トレーニング・キャンプが開催されたのです。この方向性では、進歩は明らかです。現在15〜20組のペアがリーダー達の気分を害する事をしています。それは明白なのです。技術的に、彼らはまだエリート選手と競う準備が出来ていません。しかしポテンシャルは素晴らしい。私達のISUとの仕事は効果があります。以前、私達には4〜6組のペアがいる事は殆どありませんでした。欧州選手権や世界選手権へ行くために、常に問題があったものです。今では競技会には何の問題もありません。今年は、平均的に20組のペアがチャレンジャー・シリーズで滑りました。今の問題は誰がベストなのかを選ぶ事です。それと同時に、ペアスケーティングの技術的側面は向上しました。感銘を受けます。

 

I︰ペアスケーティングもまた子供達のスポーツになってしまうという、恐れはありませんか?

 

N︰これは確実に起こらないでしょう。短期間でメダルを勝ち取るペアを作る事が難しくなってからは。ペアスケーティングはもっと成熟したスポーツです。

 

I︰ペアスケーティングには良い将来がありますか?

 

N︰非常に将来有望なジュニア勢が育っています。数年の間に、その中からチャンピオンが輩出できると思います。主要な事は急がない事です。繰り返しますが、多くはISUのフィギュアスケート改正に関する方向性にかかっています。

 

(中略)

 

I︰とは言え、コーチにとって、スケーターとは元来は1人の人でしょうか?それとも成功を成し遂げるという意味を持つものでしょうか?

 

N︰私達の仕事の結果は得点表示板のスコアです。そしてそれ以外にコーチには何の目標があるのでしょう?私達は祖国のために働いています。皆が知る通り、ここには最高のアスリートが住んでいます。

 

I︰ですが精神面に関してはどうでしょう?

 

N︰記者としての貴方という人を理解できます。同じ人々がテレビで1つの事だけを言うのです。外側にいる人々が続いて私に答えます。「良い人間というのは職業ではない」と。柔和で、優しいアスリートは最高レベルには到達しないのです。私は自分のアスリートに屈辱を与えた事はありません。しかし彼らは未だ私にとって、表彰台に立つべき人々です。彼らは自分達にそれを求めます。

ところで同じファン達が言うには、コーチは仕事をして、そして放り出すのだとか。でも貴方達はアスリート達を酷いスケートの後に泥の中から引っ張り出す人々なのですか?コメントは色々な言い方があります。ある男子や女子選手がロステレコム杯の後に、涙を流しながら氷を後にしたのを知っています。そして長い時間を使って回復しました。アスリートは自分自身に困惑し、そしてコーチへの信頼を止めてしまう。結果として、緊張感あるシステムが徐々に戻ってくるのです。そのようなアスリートが少しでもいるのは良い事です。

信じて下さい。私達はスケーターのメンタルヘルスを考えています。でも第一に、私達には勝利するという務めと向き合っています。スポーツにおいて、他の道はありません。そして最初の失敗の後、落ちていかない強い性格を持つ者だけが、スポーツの場面にやって来るのです。更に悪い事は、両親達が子供達を後押しする事です。でもこれは違う問題で、長い話になります。

 

(後略)

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著名なコーチのインタビューは読み応えがあります。ニーナ・モーザーコーチが最近のフィギュアスケートの傾向に思う所があるとはいえ、これほどハッキリと語れる人は日本人だと難しいような気がします。この辺りは素直に凄いなと思いますね。そして、長い経験から、全てはISUが選ぶ方向性で決まると理解している。勝つためにはスタイルも振付も変えなければならない。これは選手が基本的に年齢が若い事を考えると、上手く対応できるかどうか…コーチとの信頼関係にもよりますかね。なかなか難しい感じもします。音楽をかけて演じるという事がある以上、たとえ若くとも「やりたい事」や「こだわり」があったりするでしょうから。

これからフィギュアスケートはどうなって行くのでしょうか…?北京五輪後にどう変わるのか、ちょっと知るのが怖い気もしますが。ただ、音楽でも踊りでも、新しいものがクラシックには絶対に敵わないように、スケートの表現においてもそうであって欲しいと、ちょっとした希望を書き留めておきたいと思います。もちろん、ミスをしなかった者が勝つ。これはスポーツですから、そうでなければいけませんが。

また大きな大会まで少し時間があります。見ている私達も、少し休んで…次の試合を楽しみに待ちたいと思います。