(2018年)ハビエル・フェルナンデスさんが4回転、練習、五輪について語る。

また今回も、少し前のインタビューです。2018年の1月、欧州選手権の時のハビエル・フェルナンデスさんのインタビューを、一部を抜粋して訳してみました。平昌五輪の少し前のものです。

 

 記事はこちらです。

 

I→質問者

J→ハビエル・フェルナンデスさん

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

ハビエル・フェルナンデス︰何故、更なる4回転を加えるのでしょう?】

 

I︰多くのスケーター達が、プログラムに更に4回転を加えています。このトレンドをどう見ますか?

 

J︰プログラムを複雑化するために、2つの違うやり方があります。ジャンプに難度を更に加えるのか、若しくは僕の場合は、要素の間にもっと複雑なトランジションをやるのかです。どちらのやり方も、扱い辛いものです。もし選手がプログラムに4回転を更に加えたら、もっと疲れる事になるでしょう。身体はもっと苦しくなり、多くのリスクを抱えます。若いスケーター達が皆一斉に多くの4回転を加える時、彼らは身体を調整する事を考慮していないのです。そして長い間プログラムにゆとりや自信を感じていない。だからこそ時々僕達は沢山の怪我を見るのです。複雑です。ただフリープログラムに4つも5つも4回転を投げ入れる事よりも、一歩一歩進む事が良いと思います。そして何が起きるのかを見るのです。

 

I︰貴方はたびたびプログラムのバランスについて話しています。フリースケートにおける、貴方の理想の4回転の数をどう思いますか?3つでしょうか、貴方がやるように?

 

J︰僕のキャリアや、他のスケーター達のキャリアにおいても、僕達が見てきた事とは、僕達はたちまち更なる4回転を加えてはいなかったという事です。僕達はもう一つトリプルアクセルを加える事から始めて、それから次の年には4回転、そして数年後にもう一つ加えました。一歩一歩進んで来ました。直ちに全てを壊す代わりに。4回転の問題は、そのジャンプのためにとても多くの準備を必要とする事です。そして他の全てを失います。4回転の前に難しい事をするのは大変なのです。ですから、もし貴方が4つも5つも4回転をやるなら、貴方は既に多過ぎるほどのトランジションを失っているのです。その後に貴方は他の人達がトランジションで9.5や10を取る所を見ます。そうしたら貴方はこうです。"あり得ない!"と。もし前半ともう少しの部分に、3分間の中に4回転だけしか無いのなら、(トランジションで)10点を取る事は不可能です。

 

I︰女子選手達は今、男子よりもずっとクリーンなスケートをします。難度によるものだと思いますか?

 

J︰全ての男子選手がより高みへと自分を押し上げようとします。数年前には、ユヅと僕が同じ状態でした。彼は何かを加えました。でもこれはいずれかの段階では止まりませんでした。それよりも進み続けたのです。

女子選手は違います。ミライ(・ナガス)はトリプルアクセルを持っています。でもそれは、その事によって20人の女子選手達がプログラムにトリプルアクセルをやろうというような事はありません!だからこそ女子選手達はもっと安定しているんだと思います。彼女達は自分が出来ると知っている事をやります。

ここに、ある男性達がいます。彼は今まで一度も、練習でさえ、まだ4回転を降りたことはありません。しかし彼らはそれでもプログラムに2度の4回転をやります。何故彼らはそれをやっているのでしょうか?疑問です。

 

I︰エテリ・トゥトゥべリーゼのチームの数人の女子選手達が公式試合で4回転サルコウを降りました。いつか女子の競技会でも4回転は普通の事になると思いますか?

 

J︰おそらく、そうでしょう。このスポーツは進化しました。複数のロシア人と日本人の女子選手達は高難度のジャンプを既にプログラムに入れています。でも僕達はもう女子選手達が4回転を跳ぶ所を見た事があります。安藤美姫は4回転を持っていました。浅田真央トリプルアクセルを持っていました。ですから僕達は確実に更なる4回転を見るでしょう。ただ僕は一歩一歩進んで行く事を願います。ここに4回転が1つ、向こうに4回転が1つ。一気に20の4回転ではなく。

 

I︰貴方は今26歳です。若かった頃と比べると、4回転を跳ぶ事が大変ですか?

 

J︰もし選手がもっと難しいトランジションをやろうとしたならば、ジャンプももっと複雑なものになります。それと年齢は僕達に反した事をやります。年齢が上がると、強さを失くして、能力が残ります。若い時には、練習でもっとジャンプをやったりランスルーをやったり出来ます。今僕には白髪がありますが、それは普通の事です。だからこそ人はある段階でスケートを辞めるのです。何故なら身体が以前のようには動かないと感じるからです。僕はその事に取り組んできて、今もまだスケートをしている事に気付いています。あるスケーター達は別の事をやるか、競技する事を辞めるのかを決めます。もしスケーターが賢いなら、彼らはいつ辞めるのかを知っているのです。

 

I︰トレーニングを調整しましたか?

 

J︰もちろんです。今、通常の練習では、各ジャンプを2回やります。それからプログラムをやって、そしてもし全てが良ければ、氷から上がります。もしも45分間に全てが出来るのなら、何故1時間半も練習をするべきなのでしょうか?何故、疲れるために、余分な45分間を氷上で過ごすのでしょうか?それから、多分怪我をするかも?誰にも分からない事です!僕達は自分達のトレーニングで更に賢くならないといけませんでした。何故なら僕はもうヤングスターではありませんから。

 

I︰シーズン初旬に貴方はインタビューで、貴方とユヅルは今シーズンはあまり氷をシェアしていない、と話しました。分かれて練習をしていると。

 

J︰今シーズンは皆がストレスを抱えます。誰もがオリンピック・モーメントに生きています。時々あまりにも高いレベルのスケーター達が氷上にいると、皆にストレスを与えます。貴方もストレスを感じるでしょう。それで、時にはスケーター達は別のグループに分かれるのです。ユヅと僕の事だけではありません。氷を少しクリアに、雰囲気を少し普通に保つ事で…でも個人的に僕とユヅに何かあるという事はありません。

 

I︰貴方の隣に羽生結弦がいる時には、どのように自信を保つ事に上手く対応しているのですか?またネイサン・チェンや宇野昌磨もです。それから、彼らがやる事を見ますか?

 

J︰僕が試合に行って、僕よりも1つ2つ、4回転を多く跳ぶ男子達と自分の結果を比べる時、僕はこう言います。"めちゃ酷いって事はないね!"って(笑) そして何故、更なる4回転をやるのですか?僕の質問は、ユヅルは追加の4回転が必要でしょうか?僕の意見では、彼には必要ありません。でも僕は彼ではない。つまり何かを言う立場ではないのです。この質問は、僕達スケーターが自分自身に問いかけるものです。

僕には本当に必要なのか?それとも、クリーンなプログラム(3つの4回転のみ)で十分に勝てるだろうか?それが僕の論点です。もし僕がクリーンなプログラムをやったら、僕はそこ(表彰台の真ん中)へ行けると思います。でもそれは他のスケーター達にもよります。

僕は4回転ループをフリープログラムに加える事を考えていました。でもその後に、自分自身に問いかけたのです。それを安定させるために、どれほどの時間と奮闘が僕に必要なのか?それに値するものになるだろうか?そして僕の答えは、いいえ、恐らくそうはならない。4回転は一般的に言って難しい事です。ループは大変なんです。何故ならエッジが滑ったり、酷い転倒をする事がありますから…多分もし僕がもっと若かったら、それをやったでしょうが、それは今この時ではありません。

 

I︰貴方は何度も語ってきました。試合で成功しても失敗しても、全てはその日によるものだと。その特定の日のために、どのように準備をしますか?そしてその日は貴方の日になるでしょうか?

 

I︰僕は、それはもっと精神的な準備に関してだと思います。もし選手が練習で良く準備が出来ていて、プログラムに確実さと自信を感じるのなら、その時は上手く滑る良いチャンスがあります。精神的に、貴方が本当にやりたいなら、クリーンなプログラムをやる事が出来ます。もし僕達が本当に自分自身、自分達のプログラムに集中できるなら、何も僕達を止められないのです。人間とはそういうものです。例えば、もし本当に試験で良い点数が取りたいなら、そのように(準備を)やるでしょう。

 

(中略)

 

I︰貴方はたびたび "フィギュアスケートとはバランスのスポーツだ"と言ってきました。これはどういう意味ですか?

 

J︰まず初めに、選手はスケートにおいて釣り合いが取れていなければいけません。それから、生活においてもです。スケートの内側と外側の調和が必要とされます。それこそがブライアン(・オーサー)とトレイシー(・ウィルソン)が最も得意とする事だと、僕は思います。彼らは選手をトラブルから離れさせようとします。そして毎日を同じようにしようとします。そのやり方で選手は毎日が釣り合いが取れたものになるのです。浮き沈みが無く。もし選手に何か必要なら、彼らはそこにいるでしょう。貴方のために、彼らはその何かが簡単に出来るようにやろうとします。とても多くの事が、僕達の頭の中を駆け巡ります。そして僕達がやらなければならない多くの事を、彼らが常にシンプルなものになるよう努めるのです。

 

I︰前回の五輪で貴方は4位でした。この時貴方は既に「メダルが欲しい」と語りました。それはプレッシャーを与えるものですか?

 

J︰そうでも無いです。当然ながらプレッシャーはあるでしょう。五輪ですから。でも僕達はある日トロントでブライアンとトレイシーと話をしました。僕はとてもストレスを感じていて、オフィスへ行ったんです。

そしてブライアンはこうでした。「聞きなさい、ハビ。君が五輪で競技をしたその次の日に、太陽はまた昇るんだよ。例え君がメダルを取れなくても、次の日は必ず訪れる。そして全て普通の状態に戻って行く。それで、何故そんなにストレスを感じている?」

それで僕は気づきました。例え五輪でメダルが取れなくても、僕の人生が終わるという事ではないのだと。僕はベストを尽くします。その事に取り組んで行きます。そしてもし、それが起こらなかったら、それは起こらなかったという事なんです。ソチでは起こりませんでした。そして僕はまだここにいます!

 

I︰ソチの後に、貴方の内側で何か変わりましたか?

 

J︰僕を前進させ続けています。僕に目標を与えました。僕は氷上へ戻り、もっと練習がしたくなりました。悲しかったとか、そういう事はありません。僕は氷上へと戻り、練習し、成長する事が幸せでした。多分、もし僕が前回の五輪で4位でなかったのなら、僕は今ここにいなかったでしょう。

 

I︰平昌ではどんな演技を見せたいですか?

 

J︰もちろん2つの良いプログラムが見せたいです。でもプログラムにおけるバランスも目標としています。僕は常に釣り合いが取れている事について話しています。でも僕はまた、人々が僕を信じてくれるようなものを試合で見せる必要があります。五輪は僕にとって完璧な時だと思います……(長い沈黙)良いスケートをして、楽しむためのね。だからこそ人々が好きなプログラムを持つのは良い事なのです。もしプログラムが上手く行ったら、楽しむ事が出来ますから。僕のプログラムでは、笑う事さえ出来るんです。そういう事が不可能なプログラムもあります。例えばブラックスワンをやる時などです。でも僕は五輪では良い感覚を持ちたいのです。僕は人々に、僕はスケートが好きだという事を見せたいです。

 

I︰五輪のメダルはスペインのスケーティングにおいて、どのように影響するでしょうか?

 

J︰過去の数年間、スペインでのフィギュアスケートは強くなって行きました。でも殆どの人々にとって、短い歴史ではスポーツだと認識する事は難しいのです。サッカーとテニスはずっとずっと長いストーリーがあります。でも願うなら、もし僕がメダルを取ったら、スペインのフィギュアスケートの成長は続いて行くでしょう。もっとアイスリンクがあって、もっとスケーターがいて、そしてそれが僕達がまた別の素晴らしいスケーター、又はスケーター達を持つ、より大きなチャンスになるかもしれないのです。僕達には既に素晴らしいアイスダンスのチームと素晴らしいペアがいます。この国にはもっとアイスリンクが出来ました。例えば、1年で2棟のアイスアリーナがグラナダに建てられました。カナダでは、1棟のビルに6つのアイスリンクがあります。それに大きな意味は無いかもしれません。しかしスペインの僕達にとっては、本当に意味のある事です!

 

終。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

2018年のフェルナンデスさんのインタビューでした。五輪の前という事で、少し前なのに物凄く前に思えます…なんだか不思議ですね。

色々、読み応えのあるインタビューが見たいなと思いつつ、何故このインタビューを訳してみたのかというと、この当時のハビエル選手の年齢が今の羽生くんに近いためです。ベテランの選手にはそれぞれ感じるものがあると思いますし、国によっても状況が違います。そして何よりもフェルナンデスさんが話すように、自分達で自分に問いかけ、決めるしかないのでしょう。羽生くんはインタビュー等で話していない事で、何かを考えているかもしれません。それが何なのか、私達ファンはずっと知らないままかもしれませんが、どこかで見せてくれるかもしれない。今シーズンは辛い試合もありますが、ようやく通常の試合数に出場する事が出来ていて、そして羽生選手は今健康にスケートをしています。

シーズン後半、どんな演技を見せてくれるのか、楽しみに待っています!

 

余談ですが…フェルナンデスさんが「僕には白髪がある」と26歳の当時に語っていましたが、26歳で白髪って、そんな事あるの???とビックリしました。例えで言っただけなのかな?それとも本当に人によるのかな。

フェルナンデスさんが引退してからスペイン代表選手でシングルでは強い選手がなかなか出てこないですね。突然選手が増える事は無理ですが、少しずつ少しずつスケートの人口が増えて、いつかキスアンドクライに座るフェルナンデスさんの姿を見られたら嬉しいです。