アレクサンダー・マヨロフさん、引退前にルールや選考などについて語る。

アレクサンダー・マヨロフさんが引退のシーズンにルールなどに関してご自身の意見を語ったインタビューがありましたので、一部を抜粋して訳してみました。

インタビューは2019年の1月のものです。

記事はこちらです。

 

I→質問者

M→アレクサンダー・マヨロフさん

 

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【アレクサンダー・マヨロフ︰テクニカル・スコアはテクニカルであるべき。主観的であってはならない。】

 

(前略)

I︰何故(現役を)続けようと思ったんですか?

 

M︰分かりません。ただ辞める準備が出来ていなかったのです。

 

I︰全てのオリンピック・ゲームのドラマが貴方に何かをしましたか?(2017-2018のネーベルホルン杯で銅メダルを獲得、五輪の出場資格を得るもスウェーデンの五輪委員会が要求した条件、チャレンジャー、グランプリ、欧州選手権で総合258点に到達する事、があり簡単には行かなかった。)

 

M︰僕が思うに、ドラマではありませんでした。ただのオリンピック・ゲームズへの準備でした。僕は世界選手権の後に、夏から休みを取らずに準備をしましたから。毎日練習して、本当に懸命にスケートをしていました。それから、全てのストレスが出てきました。何故なら僕はネーベルホルン杯で五輪の枠を確固たるものにしたのに、それからまた別のゴールに到達する必要があったからです。それからまた別のゴール、そしてまた…。そして、欲しかった最終結果は得られなかった。ですから、もちろん悲しいです。もしかしたら燃え尽きる事さえもあります。それから、それは終わって、もっとハッキリと考え始めます…やり直すのです。

 

I︰貴方はこの地で勝ち取る事で国際パスを得てから、スウェーデンの五輪委員会が貴方の出場を許可しないと知ったのは、かなり遅かったですね?

 

M︰はい。欧州選手権の後です。

 

I︰貴方がどう感じたのかを質問する事は出来ますが、でもそれは…

 

M︰実際、僕はそんなに気にしませんでした。僕は自分の仕事をして、それ以上は出来ませんでした。僕は彼らの決定に影響を及ぼす事なんて出来ません。だから、まぁ、悲しいけれど、一体何が出来るでしょうか?

 

(中略)

 

I︰貴方が上手く出来て五輪への国際チケットを得ても、五輪へ送らなかった事とは、やる気を失わせるものであったでしょう。つまり、貴方だけではなく、スウェーデンの若いアスリートにとってもです。

 

M︰若い選手にとっては、その通りです。邪悪な下降して行くスパイラルです。もし選手が適正年齢なら、良いでしょう。僕は初めての五輪では適正な年齢でした。でも例えばアニタ・オーツランドの現在を見てみましょう。彼女は適した年齢ではない。彼女はまだ若く、大きな競技会に出場して学んだ事がありません。スウェーデン五輪委員会は、選手に若い才能があり、次の五輪で勝てるポテンシャルがあるなら、必要条件を低くします。彼女は最初の五輪には行けるでしょう。でもその後の2度目の五輪には、彼女は僕と同じような高い基準等の元で落ちてしまいます。そしてもし彼女がその基準を満たせなければ、彼女は送られないのです。若いスケーターが、僕が言及した最初の基準の元に落ちたなら、その選手は試合へ行って、そして同じ宿命に出会うのです。

そして、そんな事が何度も何度も繰り返し続くでしょう。吐きそうに気分が悪い事です。そんな事をしてはいけない。委員会はただその瞬間にベストな人を送るべきです。それが正しい行為です。そしてもし誰も予選で基準に達しなければ、誰も送らない。ただ標準を高く保つには、ベストな人が行くべきです。

 

I︰そして、国際的な標準とは既に高いですね。

 

M︰はい、本当に高いです。もし貴方が世界選手権の予選を通過したら、貴方は良いスケーターという事です。疑いも無く。何故なら現在は、もしステップアウトか何かをしたなら、フリーへの進出資格は無いからです。クレイジーですよ。ただ他の国でも同様ですが、政治です。

 

(中略)

 

I︰ロングプログラムは今では短くなりました。ショートプログラムのように感じます。少し説明してもらえますか?

 

M︰かなり短いです。ショートプログラムとは、もっと有酸素運動だと言えますね。息継ぎをしたりクールダウンする時間がありません。ロングプログラムの変更がある前は、スタミナを必要とするものでした。2つの違った技術のセットで、あるスケーターはショートが得意で、他のスケーターはロングが得意だったり。でも今は、かなり同じようになりました。今ではロングプログラムはショートプログラムのようなんです。ただ少し時間が長いだけです。

 

I︰彼らは要素を一つ取り去りましたが、それには今短くなった30秒の価値がありますか?

 

M︰いいえ、ありません。多少、人によりますけれど。もしスケーターがクロスオーバーをやっているだけならば、そんなに悪くない。でもスケート技術で点数を稼ぎたいなら、それは出来ません。何故そこを変えたのか分からないです。

 

(中略)

 

I︰貴方はトレーニングを変える考えがあると言っていました。そして結果が出るには3-4ヶ月かかると。どんなものが含まれますか?

 

M︰システムの変化と共に、どうなるのかテストしないといけません。僕は今でも、この新しい短めのロングプログラムにどう影響するのかを見ようとしている所です。練習での全ての変更は毎日起きる事で、結果が出るまでには少なくとも4ヶ月かかります。

 

I︰4回転の発展について考えていた事がありました。そしてその後には更なる4回転です。これは、つまり、若いアスリートが1日に100万回も4回転を跳んで犠牲を払う事は、貴方を心配させるものですか?

 

M︰でもそれは簡単になりつつあります。まず人々はトリプルアクセルを話題にしました。そして今ではトリプルアクセルはヒュッという感じのものです。そのジャンプのトレーニング方法の事です。僕は4回転を減らし続けて行く事がベストだと思います。でも僕が記者会見で言ったように、「プラスのGOE」を取り除く事です。何故ならプラスゾーンはとても主観的ですから。良いスケーターがダブルジャンプを跳ぶとします。そしてもう一人がトリプル。トリプルを跳んだ選手がプラス1か2で、ダブルがプラス5です。そうするとダブルを跳んだ選手の勝ちです。クレイジーです。ダブルはトリプルのプラスのものよりも価値があるべきではない。

ターンをマイナス1としましょう。ステップアウトはマイナス2です。ステップアウトや転倒のある本当に悪いジャンプはマイナス3。正確である必要があります。どんなに高く跳んだとか、どんなに良いジャンプかは関係なく。ステップアウトは常にステップアウトなんです、何があろうとも。それが明瞭であるべきで、それがテクニカル・スコアだからです。テクニカル・スコアはテクニカルであるべきなのです。主観的であるべきではありません。

今スケートを見ていると、僕はフィギュアスケーターだと感じないんです。何故なら誰が1番になるのか予想が出来ませんから。僕はそこに座りながら、「分からない。何故彼女が1位になれたんだ?」と。理解出来ません。それこそがマイナスとプラスです。来年には取り除く事を望みます。若しくはもっと高くなるのか。分からないです(笑)

 

I︰プラス1やプラス3や又は色々…だった時、貴方にはその説明では理解を得られないものでしょうか?

 

M︰はい、理解出来ません。多分、僕には考え等はあるのですが、理解は出来ません。今では初心者のように感じます。僕は自分のやる事をやって、それから採点を待つのです。

僕が女子シングルを見ている時、誰が勝つのかを理解したいものです。けれど僕にとってはアイスダンスを見ているような感じですね。分からないんです。スケーターとしては、考えを持つべきなんですけれどね!僕はスピンのレベルをカウント出来ます。でもその他は、僕にはどのように採点されるのかは分かりません。

 

I︰最近の変更は全て悪いものですか?

 

M︰いいえ。ショートプログラムにおいては、僕達は後半に一つのジャンプだけが追加得点が得られます。これは非常に賢いアイデアです。何故なら選手にもっと良い計画をさせるものですから。どのジャンプが後半に良いのか、どれが最も点数を稼ぐものか。それからまた、どれならその場所でリスクを持ってやれるのか?そしてその変更はプログラムのバランスがもっと保たれます。このアイデアには賛成です!

 

(後略)

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マヨロフさんの引退シーズンのインタビューから抜粋しました。選手がベテランになり、引退を決断すると、それまでなかなか口に出せなかった言葉を少しずつ語ってくれます。それでも勇気があると思いますが、ファンとしてはモヤがかかったものをサーッと取り払ってくれる事もあったりするので、有り難いです。

年齢としては若くても、長く競技者として人前で発言をしてきた人ですから、考え方が大人というか…五輪に関しては、とても誠実な答え方でカッコイイなと思ってしまいました。でも、四年に一度しか出場機会がない五輪…出たかったですよね。元記事にフィジカル・セラピストの資格があると、ありました。その仕事をしていくのかな?スポーツ選手に関わるのかどうかは分かりませんが、やはり身体の機能などに興味を持って資格を取ったのでしょうか。スポーツをしながらだから、とても大変だったと思います。でも新しい世界での仕事は、最初はもっと大変かもしれませんが、いつか違う形でスケートと関わるマヨロフさんが見られたらいいな、とちょっと願っています。

 

ここ数年で気づいたのですが、フィギュアスケートを長く見ていると、応援していた選手が引退して気持ちが離れたりする事もありましたが、プロだったりコーチだったり、全然違う形だったり、メディアでだったり…色々また活躍を見る事があり、それも新しい楽しみ?になって来ました。選手時代にはそこまで惹かれなかったスケーターが、引退後の言葉や仕事ぶりを見て「素敵だなぁ」と思ったりする事もあります。自分でも不思議だなと思います。