エレーナ・ラジオノワさんが現在のフィギュアスケートについて語る。

エレーナ・ラジオノワさんが現在のフィギュアスケートについて、色々と語っているインタビューがありました。一部抜粋して訳してみました。

 

記事はこちらです。

 

ロシア語→英語→日本語です。

 

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エレーナ・ラジオノワ︰今解説をしていて、何を言うのか2度考えます。ファン達が純粋なフレーズのためにさえ、嫌い始めるから。】

 


I︰この前の世界選手権をどう思いましたか?エフゲニア・メドベージェワの演技と、エリザベータ・トゥクタミシェワが出場できなかった事については?


E︰実のところ、アリーナ・ザキトワをもう一度お祝いしたいです。何故なら、もし私が間違えていなければ、彼女は全てのタイトルを勝ち取った唯一のスケーターです。アリーナの事が嬉しいです。私は彼女を応援していました。私は彼女をフィギュアスケーターとして、アスリートとして好きです。それに彼女は非現実的な美しさです!

私は全ての女子選手の事を幸せに想います。ジェーニャは自分自身を乗り越えました。良くやりました。彼女の世界選手権への道のりは、簡単ではありませんでした。でも彼女はファイターとしての彼女自身を見せたのです。私達は皆、彼女の情動を見ました。第一には、彼女は以前と同じレベルだと証明しました。

出場しなかったトゥクタミシェワには気の毒に感じます。彼女はトップ3になれたと思います。3Aを持っていますから。そのジャンプが彼女を助けた事でしょう。

ソフィア・サモドゥロワは、少しついてなかったと思います。全てがクリーンに見えました。彼女は良く滑りました。でも彼女には世界ランキングが欠けていて、あとはおそらく、成熟したスケーティングも。


I︰ザギトワの記録は、どういう訳か背景へと消えていきました。彼女とエテリ・トゥトゥべリーゼに属するユニークな記録です。皆がジェーニャとリーザの事を話していました。アリーナが優勝すると予想しましたか?

 

E︰正直に言うと、いいえ。何故かと言いますと、彼女の用意している事に関して様々な話がありましたから。それから彼女の世界選手権への準備も。見ているのが興味深かったです。何故なら私達の国の女子選手達がどのような演技をするのか、誰も分かりませんでしたから。おそらく最も安定していたのはソフィア・サモドゥロワでした。でもまた、私達が知っているように、メインの競技会では心理的な問題が起こり得ます。

 

(中略)

 

I︰貴方は国別対抗戦でチームの一員でした。貴方にとってどれほど重要でしたか?今年はメドベージェワが怪我のために回避しました。ザキトワの理由は不明です。この競技会の意味は何でしょうか?

 

E︰この競技会にはとても高い地位があると思います。でも多くのアスリートは個人戦の世界選手権に向けて準備をします。そこに全ての力を注ぎます。多くの人はチーム戦をあまり真剣に受け取らないんです。公式戦ではないからです。でも私はもうすぐ公式戦になると思います。既にオリンピックの分野にありますから。

私は本当に真剣にその競技会へ向けて準備をしていたと言えます。私は2度チーム戦に参加しました。私にとっては、おそらく世界選手権さえも更にエキサイティングでした。何故なら私はチームの順位を下げることは出来ないと理解していたからです。

選手が自分のために演技をする時、転倒はその選手個人の失敗です。でもチーム全員か貴方の後ろに控えている時は、その人々を負けさせる事は出来ません。挑戦したり、物凄く応援してくれる人々です。フィギュアスケートは個人のスポーツと呼ばれます。でもそこでは個人的な事は全て裏側へと消えます。チーム・スピリットが灯るのです。私には、全てのアスリートがこの感情を感じる必要があるように見えます。個人のアプローチからチームのものへと換えるのです。

 

I︰貴方の意見では、女子シングルにおける来シーズンの優勝候補は誰ですか?

 

E︰来シーズンはとても面白くなると思います。誰が優勝候補になるか、は言えません。とても沢山の女子選手達がいますから。私達にはとても強いジュニアがいます。サーシャ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワ、アレーナ・コストルナヤ。

アレーナが今どんな体型なのか気になります。彼女は世界ジュニアに出場しませんでしたから。フィギュアスケーターとして、彼女からは沢山の感銘を受けます。

サーシャ・トゥルソワとアンナ・シェルバコワにはウルトラCの要素があります。4回転です。主要な事はそのジャンプを失わない事です。

それからアリーナ・ザキトワとジェーニャ・メドベージェワがいます。またここに、彼女達がどんな体型なのか、言うのがとても難しい事があります。残された時間があまり無いからです。

そして、彼女達が4回転を習得するのかという事もまた疑問です。ジェーニャは既に挑戦しています。知っていますよ。でもあの年齢では、とてもトラウマ的です。サーシャやアンナにとっては、もっと簡単になります。今のジェーニャよりも。12、3歳で習ったのですから。

 

(中略)

 

I︰4回転に話題を戻しましょう。トゥルシンバエワは20歳でそのジャンプを跳びました。これは現実でしょうか?

ジェーニャ・メドベージェワの4回転を信じられますか?

 

E︰人々はおそらく私を嫌うでしょうが、でも…分かりません。大変な事です。

 

I︰多分、必要のない事ですか?コストルナヤもまた、4回転を持っていません。

 

E︰彼女にはトリプルアクセルがあります。リーザ・トゥクタミシェワのように。アレーナは早い年齢で着氷しました。それから過渡期の年齢で失って、また今復活したんです。彼女は既に技術を持っていて、どうやるのかを知っていました。彼女は必要な体型を得て、全てが上手く行きました。

トゥルシンバエワは、私にとってはまだ子どもです。彼女はとても小柄です。彼女には大人のスケーティングがありますが、本当に小さいんです。そのために、彼女にとっては全てのジャンプを学ぶ事はより簡単なのです。

 

I︰そして、トゥルシンバエワは世界選手権の枠を保証されています。私達の女子選手はストレスを経験します。何故なら、枠が十分ではないから?疲弊しますし、おそらく怖いでしょう。

 

E︰当然、疲弊して、そして意欲が出ます。誰かは、逆に意欲を失います。人々が言うように、最も強い者が生き残ります。来シーズンはとても興味深いです。トゥクタミシェワに言及する事を忘れていました。彼女からもまた、何を期待するのか知られていません。

 

I︰現在私達は4回転を跳ぶ少女達におかしな態度を取ります。彼女達は技術しか持ち合わせていない、と信じられています。彼女達はロボットで、芸術性は無いのだと。

何故人々はこのように言うのだと思いますか?貴方は4回転ジャンプに感心したと言っていました。

 

E︰感心しきりですね。私にとっては本当にクールです。彼女達は壁を壊しました。数年前には、少女達があのような大変な内容でスケートをするとは、誰も信じる事さえ出来ませんでした。スケーティング技術はどうかと言えば、私が思うに、これは経験です。とてもプロフェッショナルな専門家が彼女達と仕事をします。この夏に彼らが振り付けを行うでしょう。

 

I︰では、貴方は彼女達が芸術性に取り組む必要があると?

 

E︰当然です。ジュニアのスケーティングは、ジュニアのスケーティング。ジュニア勢はシニアの選手のようには滑りません。少女達は成長します。女性らしさを身につけて、自信も得るでしょう。彼女達は音楽を違うように感じるようになります。今シーズン、成長すると思います。

 

I︰彼女達は4回転を維持していくと思いますか?最も急き立てるような質問ですが。

 

E︰分かりません。とても答えるのが難しいです。それは思春期がどのように過ぎていくか、によります。私達の多くを壊し、駄目にするからです。

 

I︰誰もが"壊れる"と言います。でもトゥトゥべリーゼの生徒、アレクセイ・イェロコフは、何も彼女達を壊さないと言いました。4回転は彼女達にとっては標準な事だと。

 

E︰そうですね、彼女達はまだ14、5歳です。18歳になる時に、思春期が彼女達を壊すのかどうかを言う事が可能になるでしょう。ですから、言うには早すぎます。

 

I︰もし貴方が15歳のジュニアスケーターなら、4回転に挑戦しますか?

 

E︰はい。おそらく、もっと早いうちから挑戦し始めるでしょう。何故かと言いますと、13歳の時は、フリープログラムを連続で2回滑る事は、私には何でも無い事だったんです。私が初めてのGPSスケートアメリカに向かう時でさえも。私は空港へと出かける直前に、フリープログラムのランスルーを2回やりました。私にとっては、簡単な事でした。

それから、私は15歳になりました。13歳でジュニアでスケートをしていた頃は、全てがより簡単だったんです。その頃を思い出すと、私とコーチは思春期について考えていませんでした。そして私達は3-3-3のコンビネーションを跳んでいました。誰もやっていなかった頃です。

今私がその事を考えると、ええ、確かに、習得する必要があったと気付きました。

 

I︰メドベージェワに話を戻しましょう。貴方は未だに彼女が4回転を跳ぶとは信じない、ですね?

 

E︰それは答えるのが大変です。ジャンプを跳ぶのは私ではありません。全ては彼女次第です。もう19歳のジェーニャと比較すると、ジュニアの女子選手は習得がもっと簡単です。

私が言える事は、19歳の時は何か新しい事を習得するのは難しいのです。別な身体で、既にある種の自己防衛本能を持っています。この心理的なバリアを打ち壊す事が、重要に見えます。それこそが、4回転を跳ぶという事なんです。身体の準備をするだけではなく、頭の中も準備をする必要があります。

 

I︰メドベージェワとザキトワは、キャリアを終えるべきだと思いますか?アリーナは全てに勝ちました。ピーク時に去る必要性があります。

どう思いますか?若い選手のお気に入りは脇に置いて下さいね。

 

E︰分かりません。もし選手達が強さを感じるなら、それならば、何故やらないのですか?選手が出来る事の最高のものを既に得てしまったと気づいた時には、去る必要性があります。もう既に挑戦した、又は選手が更なる見込みが見えない時です。

もし選手がスケートをしたいのなら、その時は、去る事など無意味です!さもなければ選手達は後悔するでしょう。多分、もっとやるべきだったのでは、と考えます。何か他に勝てたのではないか、と。彼女達の気持ちがどんな風かは分かりません。でももし戦いたいのなら、やらない手は無いのでは?

 

I︰貴方の意見では、トゥルソワ、シェルバコワ、コストルナヤ、彼女達が今のリーダーでしょうか?

 

E︰はい。ひょっとしたら、今シーズンのリーダーになるのでは。でも現時点では、それを言う事は困難です。誰がより安定しているか、になります。加えて、ジェーニャとアリーナは世界的な評価を得ています。ですから、彼女達のクリーンなスケートには、ジュニア勢の滑りで勝つ事は難しくなるでしょう。

 

I︰それから心理的に、もう既に複雑な事が出来る15歳の女の子に負ける事は、かわいそうな事では?

 

E︰私はシニア勢に勝った、同じ15歳の女の子でした。つまり、何をすればいいのでしょう?そういうものなんです。私もまた、場所にいました。

 

 

I︰これはどう思いますか?ショートプログラムに4回転を許可する必要性は?

 

E︰はい。いいと思います。でも禁止されていると知りませんでした。私の考えでは、ジュニア勢はショートに物凄く難しい事をやるべきではないと思います。徐々に全てをやる事が必要になります。それにジュニアのプログラムがシニアよりも難しくなったら、面白くないでしょう。

 

I︰シニアの年齢を引き上げる事の必要性をどう思いますか?女性のスケーティングにするためです。少女っぽさではなく。

 

E︰そうですね、もし年齢を1歳か2歳引き上げたとしても、私には違いは見えません。もし変えるとすれば、もっとですね。1歳では物事はそんなに変わらないでしょう。

 

(中略)

 

I:貴方が憧れるスケーターは?

 

E︰カロリーナ・コストナーです。それから、おそらくキム・ヨナ浅田真央です。

 

I︰貴方もコストナーのように左利きです。でも右利きの人のようにスケートをしますね。何故ですか?

 

E︰そうですね、ヨーロッパとロシアでは、アプローチが違います。彼らはもっと個人的なアプローチをします。ロシアはグループのアプローチです。他の皆のようにジャンプをします。左利きなのか右利きか、質問される事はないのです。残りの人々のようにスケートをします。

 

I︰羽生結弦とネイサン・チェン、どちらの方が好きですか?

 

E︰ネイサン・チェンです。結弦は、ある種の宇宙的な途方もないスケーターだと思います。彼のような人はいません。皆とは違うんです。

それからネイサン・チェンはもっと男性的なスタイルのスケーティングをします。彼はとてもカリスマ的なスケーターだと思います。彼がスケートをする時、彼には非現実的なエネルギーがあります。競技場中が彼のスケートの後に立ち上がるんです。

 

I︰貴方の意見では、ブライアン・オーサー羽生結弦への貢献はどれほど強いものでしょう?彼は他のコーチとでも果てしないスケーターになれたでしょうか?

 

E︰結弦はどのコーチとでも、果てしなくなれたと思います。当然、多くはコーチ次第ですが。つまりブライアンは彼へのアプローチを見つけたという事を意味します。そして彼らはどちらも、何年にも渡り勝利するための戦略を見つけたのです。

 

I︰子どもたちはスケートのために何を犠牲にしますか?結局のところ、スケートは子ども時代を奪うものでしょうか?

 

E︰全くもってナンセンスですね。フィギュアスケートは私に名声、旅をする能力、お金を稼ぐ力を与えてくれました。私が得た唯一の有利な所です。もし私が夕方にいつも子どもたちと庭で遊んでいたり、普通の子ども達のように学校に通っていたとしたら、もっと良い生活を送っていたとは思わないです。フィギュアスケートは、もし私が普通の人生を歩んでいたとしたら、それ以上の多くのものを私に与えました。

 

I︰貴方が競技をしていた時には、それほど多くのヘイターはいませんでした。

 

E︰いなかったです。神に感謝します。私は試合のコメントを始めてから、もっもヘイター達に直面しました。そうしたら、人は何を言うのかを2度考えるようになります。何故なら、ある種の純粋なフレーズでも引き合いに出されてしまいますから。そして"邪悪なファン達"が貴方を嫌い始める事が出来ますから。

 

I︰メドベージェワやザキトワの演技のコメントの後に、侮辱的なメッセージが来ますか?

 

E︰はい。彼らは一度書いてきました。私がアリーナにアンダーローテーションがあると言って、リプレイを見たんです。私は、確かではないですが、と言いました。そして審判はアンダーローテーションのコールをしませんでした。それで多くの否定的なものを受け取りました。

彼らはこう書いてきました。

「貴方はフィギュアスケートの何も理解していない。」

「負け犬」

「彼女が好きじゃないんですね」

私は返事をしませんでした。私は何も悪い事は言っていない、と分かっていましたから。どのスケーターも尊敬しています。どれほど厳しいものかを、私は知っています。私は誰も傷つけたくないんです。

 

(後略)

終。

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エレーナ・ラジオノワさんはまだノービスの頃から「すごい選手がいる」と注目されていました。ソチ五輪エキシビションに登場した時、4年後の五輪でラジオノワがロシアのトップ女子選手になるだろう、と私は思っていましたが…。

五輪選手になれなかった事は予想できませんでしたが、苦しんだ時期があったからこそ分かる事が彼女にはあって、その彼女が解説者として活躍するのは良い事ではないかなと思います。

新採点でしか競技を経験していない人の解説は、もっと必要になってくる気もします。もちろん、長年フィギュアスケートに関わった人も必要で、どちらの解説も聞けるのは良いですよね。