ヴィンセント・ジョウ︰契約のコツ。どのように木下グループがヴィンセント・ジョウのスポンサーとなったのか。

少し前の話ですがヴィンセント・ジョウ選手と木下グループがスポンサー契約をしました。その当時の記事が色々ありましたが、ジャパンタイムズさんに出ていたので、こちらを訳してみました。

7/2の記事です。

 

https://www.japantimes.co.jp/sports/2019/07/02/figure-skating/art-deal-kinoshita-group-came-sponsor-vincent-zhou/#.XVDjISVcWEc

 

【ヴィンセント・ジョウ︰契約のコツ。どのように木下グループがヴィンセント・ジョウのスポンサーとなったのか。】

先週(この記事は7/1のものです)歴史が作られた。ある日本の企業が、トレーニング費用の後援をするために海外のスケーターを選んだのだ。木下グループは米国のヴィンセント・ジョウの支援に同意した。この複合企業は、住宅供給・開発、不動産ベンチャーとして最も良く知られている。そのウェブサイトにて、この18歳を後援する契約に署名した、とCEOの木下直哉からアナウンスがあった。

 

カリフォルニア州サンノゼ出身のジョウは、過去数シーズンに強くなってきた。彼は昨シーズンの世界選手権で同国のネイサン・チェンと羽生結弦に次いだ銅メダリストになった。平昌五輪で6位になった1年後だ。

 

過去に日本の企業が後援の取引として海外のスケーターを雇用した実例がいくつかある。米国のジャネット・リンが最初で、1970年代に遡る。彼女がプロになった後に、カルピスが契約した。デサント社もまた1984年の五輪チャンピオン、米国のスコット・ハミルトンと1980年代にアパレル業のための契約をした。

さらに最近では、資生堂が昨年パーソナル・ケア・カンパニーのグローバル・ブランド大使として、平昌五輪チャンピオンのロシアのアリーナ・ザギトワと契約を結んだ。

 

アイスタイムはどのように木下グループとの関係が起きたのかについて、横浜でのドリームズ・オン・アイスで彼が滑る前にジョウとのインタビューにて独占的なストーリーを得た。

 

この協定の連結は、濱田コーチが会社とジョウの両方を調整した事による関係だった。4度のナショナルチャンピオン宮原知子、昨シーズンのグランプリファイナル・チャンピオン紀平梨花、そして数年間に渡って他の大勢の選手達の、伝説的な指導者である濱田の、預かっている選手への哀れみの心は良く知られている。彼女により、この分岐的な契約は完成された。

 

「第一に、僕は木下グループが2022年五輪までの僕の旅の一部になる事が、本当に興奮しています。」とジョウはアイスタイムに話した。

「第二に、僕はミスター木下と濱田先生にとても感謝しています。この接点の始まりを

助けてくれた事に。」

 

「彼らとのパートナーシップを上手く出来た事は、僕は本当に幸運だと思います。彼らは他にも日本人スケーター達(宮原知子、島田高志郎など)を支援しています。実はこれは僕の初めての大きなスポンサーです。」とジョウは言及した。

「僕には多くの大規模なスポンサーがありません。財政的に、スケーティングとは大きな苦しみがあります。だから僕は、僕の旅を支援しようとしてくれる人々がいる事が、無茶苦茶ラッキーだなと思うんです。」

「ワクワクします。新しい事ですから。僕が彼らのために何が出来るのか、彼らが僕のために何が出来るのか、を見る事が楽しみです。」とジョウは付け加えた。

 

ジョウは、過去6ヶ月における彼の人物像を上げる事に責任がある時に、世界選手権と国別対抗戦での力強い登場を挙げた。

「可能性のあるスポンサー達はスケートの世界の才能に目を光らせています。それで僕の昨シーズン後半の過程では、多くの人々の目が僕に向き始めて、僕の事に少し気づいた事を感じました。」とジョウはコメントした。

 

これは米国でのスケートの人気の状態を表している。ジョウのような、2017年世界ジュニアチャンピオンで、過去3シーズンで全米シニアメダリストである才能ある選手が、スポンサーシップのために海外を見なければいけないのだ。

 

ここに、シリコンバレーの中心で生まれた青年がいる。この秋にアイビーリーグの学校(ブラウン大学)に進学する予定で、その上アップル、フェイスブック、グーグルのような会社が構えているが、一度もその土地のプロダクトに歩み寄って来た事は無い。このような毎年何十億もの収益を出す会社が、ジョウのような青年を見逃す事は、完全なる不名誉である。

 

彼と彼の家族は、財政的状況に関して濱田コーチと心からの会話をしたと認めた。それが、濱田コーチが歩み寄り、色々と取り組んだ時だ。

 

「僕が濱田先生と仕事をするために日本へ来た時、母と僕はスケートとお金の状況について彼女に話しました。」とジョウはコメントした。

「彼女はこの事に関してとても思いやりがあって、進んで生徒を助けようとしてくれました。彼女はミスター木下に連絡をして、僕達は大阪のリッツカールトンで会いました。僕達は少し話をして、色々な事を調べて、全てが整いました。正直に言うと、彼らは僕のためにかなり簡単に都合をつけてくれました。このような人達が僕の支援するチームにいるので、僕はラッキーです。それは全てのスケーターやアスリートが得られるものでは無いのです。」

 

アイスタイムは契約の期間についてジョウに尋ねた。

「1年間だけです。」とジョウは言った。そして財政面は明らかにはしない。

「新しいシーズンの終わりに、僕達はまた話し合いをする予定です。煮詰め直します。でも願わくば今シーズンに良い結果を得て、2022年に向けて可能性を示したいです。」

 

契約に関する多数のコメントのリクエストは、木下グループからはこの取材時までに応答が無かった。

 

ジョウは、自分と同じ国に本社を置いていない会社からのこのような支援を受ける事は 、スケーターにとっては珍しい事だと理解していた。

「海外でスポンサーシップを探す時に、まず初めに彼らが質問する事は、どの国を僕が代表しているか、という事です。」とジョウは述べた。

「もし僕が彼らのホームカントリーを代表していなければ、その話は即座に脇道に逸れるものです。だから僕は本当に物凄くラッキーです。この話が上手く行くための最も重要な事は、濱田先生との関係です。僕は先生と良い関係性を築いていて、彼女はスポンサーシップのために目を光らせている人々に対して、僕に関して良い事を話してくれます。  」

 

【2カ国でのトレーニング】

筆者はジョウの練習スケジュールがどうなるのかが気になった。彼は濱田コーチと、それからコロラド州コロラド・スプリングスでタミー・ギャンビルのどちらにも指導を受けている。

「僕はブラウン大学の秋学期に入学します。だから恐らく、日本には殆ど行けないです。」とジョウは語った。

「僕はボストンでトレーニングをする予定です。そこはブラウン大学があるプロビデンス(ロードアイランド州)から車で1時間半かかる所です。とても難しい学期になるでしょう。僕は数週間、国際試合のために遠くへ離れますから。」

 

ジョウは同時にエリート・スケーターと学生でいる事の難しさを指摘した。

「学生アスリートにとって、2週間でも学期の間に居なくなるというのは珍しい事です。ですから5週間も離れてしまうというのは、厳しいものになります。」とジョウはコメントした。

「僕はそれぞれの教授と個人的に関わりを持たないといけません。何かを話し合わなければ。僕は現在、コース選択の過程に取り組んでいる所です。教授達にEメールを送っていて、やりくりの仕方や、僕が使える手段が無いかどうかを見ています。」

「スケートにおいては、スケートと大学のバランスを取る事が難しいです。僕が慣れているようなトレーニングは出来ないです。時々は、違った状態で練習する事になるでしょう。精神的、身体的な疲弊。慣れないかもしれません。」

 

ジョウは新たな挑戦がどれほど厳しいものかを強調した。

「学校の事が頭の中にあると、スケーティングに影響します。又はその逆もあります。」とジョウは言及した。

「僕は競技の間、多くの事に追いつかないといけないです。どの学生アスリートでも、彼らが試合のために遠く離れている時にやるべき事です。」

「ただ僕にとって新しい事なのです。少し緊張します。でも同時に物凄くワクワクもしています。何故ならスケートの世界だけに居続けると、全てがとても小さく、閉鎖的に見えるものですから。」とジョウは続けた。

「僕は新しい事を経験する事や、スケート界の外の人々と繋がる事がとても楽しみです。違った捉え方を見てみたいです。大体の事は、大変になるだろうと分かっています。でも楽しみです。」

 

アイスタイムは、ジョウが大学の学期を終えてからの休暇の間や、来年1月にある全米選手権の前に、日本へ行くかどうかが知りたかった。ブラウン大学には、彼が利用できる柔軟なシステムがある事が、彼は幸運だという事が分かる。

 

「僕は秋期をやるだけです。ブラウン大は僕に学期を休む事を許可しました。それから2022年の五輪へ向けてギャップイヤーを取る事もです。」とジョウは言った。

「上手くいけば、出来ると思います。濱田コーチは僕のチームの中でとても強みを持った人です。1週間かそれ位なら、日本に戻るのは、やってみても良いですね。色々な事を磨き上げるために。」

「僕は確信していますが、1ヶ月後、1学期中の自分自身でのトレーニングの後に、僕には技術的な補強が必要になる事でしょう。」

 

筆者はある疑問をジョウに尋ねた。彼が濱田コーチと練習している間の、大阪での住宅の準備に関してだ。

 

「今までの2週間はホテルに滞在していました。ですから徒歩とバスで関西大学のリンクへ行きました。」とジョウは言った。

「濱田コーチが、その後に僕が滞在できる家か何かを見つけてくれたと思います。ですからもう少し良くなると思います。もう少しだけ快適になるでしょう。

彼女は氷上での事を手伝うだけではないのです。僕のオフアイスの事も、とても世話してくれます。そしてスケーター達がベストな状態で練習できるように、選手の状態を必ず確かめます。」

 

【2019-2020シーズンのゴール】

アイスタイムは、新たなシーズンのジョウの願望とは何かを聞きたかった。

「グランプリファイナルに行けるように願っています。」と彼は言った。

「願わくば、世界選手権でまたメダルが取りたいです。全米ナショナルは…2位か、1位か、どうなるでしょうか?」

 

新しい活動において、彼にとって成績が特に難しいものになると、ジョウは気づいている。彼の学校への参加だけではなく、2ヶ月前に米国のスターズ・オン・アイスツアーの最中に苦しんだ、左膝の靭帯を痛めた事から回復しようとしている事もそうだ。

「ファイナル進出は大変になりそうです。大学がありますから、それがどのように僕のスケーティングに影響するか分かりません。」とジョウはコメントした。

 

「確信しているのは、僕が予想しない挑戦が出てくるだろうという事です。また、僕が既に予想した挑戦は、僕の予想以上に厳しくなるでしょう。

でも僕がファイナルに進出したら、とても嬉しいです。そこに行くために、とにかく懸命に練習しないといけなくなります。怪我からの復帰がありますから。僕は自分自身にこう言い聞かせていました。今年の夏は健康を維持して、何か馬鹿な事をやらないようにしよう、と。でも少なくとも、怪我をした瞬間は予想していました。」

 

「使い過ぎによる怪我ではありません。」とジョウは述べた。

「僕が、昔の悪いトレーニングの癖をやってしまったような事ではないです。それは僕が予期できなかった突然の事でした。運が悪かった。とても不運でした。それは新しいシーズンに影響を及ぼすかもしれないし、そうならないかもしれません。物事を現実的なレンズを通して見ようとしています。」

 

「僕が成長出来る時間制限はどこなのか?僕が旅が出来る時間制限はどこなのか?混乱したものが起きたり、多くの発達が出来なくなる時間制限はどこなのか?僕は自分の頭の中で、本当に色々な事の計画を精密に立てようとしています。

それらが僕のゴールです。確実に厳しいシーズンになるであろうシーズンに熱望するゴールです。」

 

アイスタイムはジョウがチェンに意見を聞いたかどうか気になった。チェンはイェール大学で1年生の年を終えたばかりだ。

「僕は彼とは話していません。」とジョウは語った。

「僕の状況と彼の状況は少し違う、と僕は言いたいです。何かを決めてかかりたくないので。彼はイェール大で練習をしている、と僕は思っています。大学は彼のためにリンクを借りています。ブラウン大のアイスリンクは、地元のホッケーチームに全ての時間を借りられています。僕がスケートを出来る時間は、午前7時か午前12時のどちらかです。つまり、毎日通学しなければいけないという事です。毎日1セッションだけしか練習出来ない事になりますが。」

 

ジョウは、世界チャンピオンのチェンの後に位置づけられている間に、彼が直面する別の問題を見極めていた。

「僕は米国のナンバーワンではありませんから。僕が行く試合を選ぶチャンスはありません。」とジョウは言及した。

「僕はグランプリに行くために休む週を選ぶ事が出来ないんです。」

 

「僕と彼では状況が違うと感じます。」とジョウは続けた。

「彼がイェール大に出席している間に彼がやってきた事を成し遂げるために、全てが彼を支えています。それは凄い事です。僕の考えの中では、比べるものではないです。僕は挑戦を楽しみにしています。」

 

我々の対話を終える時に、筆者は濱田がアイスタイムの以前のインタビューで話した事に話題を戻した。彼女は何年も前から海外の選手達からトレーニングの依頼があったが出来なかったと言っていた。何故ならば彼女が働いているリンクには厳しいルールがあるからだ。

 

筆者はジョウに尋ねた。何故彼が選ばれた選手となったのか、について。

「僕は舞台裏で何があったのか、知りません。ただ分かる事は、彼女と強い関係を築けた事は、非常に幸運だったという事です。」とジョウはコメントした。

「恐らく、そんなに幸運な人は誰もいないでしょう。彼女と練習をしたがっている多くのスケーターを僕は知っています。でも連盟か何かの方針で出来ないんです。僕には知り得ない事ですけれど。

僕は無茶苦茶ラッキーですよ。彼女が僕を進んで助けてくれる事に、とても感謝しています。彼女は僕が今まで想像する事が出来た事よりももっと、僕を助けれくれました。」

 

 

終。