TSLさんのYouTubeチャンネルより、元国際審判ジョー・インマンさんインタビュー。⑦終

パート⑦です。これが最後です。

 

色々なコーチ達との仕事、IJSと6.0について、などなど。

 

D︰デイヴ・リースさん

J︰ジョナサン・バイヤーさん

I︰ジョー・インマンさん

 

 

I:プログラムの最後を変える話に関してだが。どれだけの人が知っているかは分からない、長い間私は口を閉ざしていたから。今はもう気にしないよ。

私はサラ・ヒューズのコーチと話をした。彼女が音楽を組み合わせたりしている時に。そのプログラムを聞いたり見たりしたのは初めてだった。そして私はこう言ったよ。

「このプログラムの最後は何処にも辿り着かない。」

下降していく部分は必要だし、私も好きだ。だが、それは観客には届かないだろうし、五輪の事を考えなさい、と。これはスポーツと共にある芸術形式なんだ。だから結びつけないといけない。観客を座席から立たせるべきなんだよ。

ダフニスとクロエの最後の部分を切り取って、どこかは分かっていたから、まさに必要だと思われる箇所へと繋げた。それを実際にやったら、彼女のスケートで観客は総立ちになるから、と。そしてどうなったか?

 

サラは今日に至るまで言ってくれる。「私は五輪で勝ちました。プログラムの音楽構成を変えたからです。」とね。

彼女は本当に慈悲深い女性だ。

 

J︰貴方が話された事の中に出てきた話で、そういった年齢層というものがありますよね、バラード的な涙を誘うような音楽が好きな人達がいます。

そして何か一つの大作を作ろうとする人達も。曲を組み換えたりする代わりに。それは、'馬鹿げてる'と思い始める事から解き放ち、また'馬鹿げてる'と感じる事からも解き放ちます。何故なら一本調子の無価値なものを捨て去ったのですから。勝利の瞬間を鼓舞しないものから去ったのです。

 

I︰それは、構成にも関わる事だよ。まずはA-B-A、それが何か意味が通じないものになると、すぐに最初の部分に戻る。そこで私は「最後の部分に変えなさい」と言った。

まず初めに、私はラフマニノフの時代の音楽を使うのは好きではない。栄光が欠けている。光を見つける事は十分可能だよ、何を使ってもね。

そして、構成は理にかなっている、"構成"としてだよ。部分的に音楽を取り除く時は、その音楽本来の持つものの質を悪くする。それを行うと、スケートの中では、下降するものだ。文字通り、音楽そのものは質が悪化する。編集の仕方によって。でも、ただそういうものなんだよ。

 

J:タイムリミットのようなものですね。僕も音楽を誰か、他の音楽関係の人に説明しようとすると、うんざりされます。まるで誕生日ソングみたいに。

 

I︰事実だね(笑)

 

J︰貴方ならどうなるか分かってもらえますよね。

それから、デイビス、ホワイト組がマリーナ・フランス・デュブレイユと仕事をした例はどうでしょうか?マリーナについて、彼女はコーチであり、まとめ役のような存在でもあります。そして音楽の事をとても気にかけます。

その話を教えて頂けますか?

 

I:そうだね、私は数人のスケーターをきっとまた助けているだろうけれど。いつも考え続けているんだ。

マリーナという人は…全ての人が彼女を恐れる。審判も、誰も彼もが。

 

D︰まぁ当然でしょう。

 

I︰マリーナから電話があった。ミッチがかけてきたんだが、それはつまりマリーナからという事だ。チャーリーとメリルと一緒に仕事をして頂けませんか、と。そしてミシガンで、個人的にマリーナから聞かれた。私は「分かった。行きますよ。」と答えた。それで音楽や表現について話したんだ。色々とね。

 

私はそこへ行って、丸1日使った。最初のプログラムを創り上げるために。シェヘラザードだ。まずプログラムには5つの気になる箇所があった。だからマリーナに言った。これでは何か的外れだと。

スケーターが最後の所で滑り続けていて、音楽は重たいんだ。ダッ!ダッ!ダッ!という感じでね。そして何も起こらない。その部分こそがメジャーな場所にあるべきだ、と伝えた。彼女は「そうですね、わかりました。わかりました。」と言っていた。

「よし、修正しよう」と言って、彼女は氷上に行って色々と何かをやっていて、そして私は「これなら世界中どこでも通用するね」と言ったよ。シンプルだったから。あとは、いくつか他の事も取り組んだ。そして全て出来上がった。マリーナは私の所に来て、大きなハグをしてくれて、お辞儀をしたんだよ。いつだって私が彼女に会うと、お辞儀をしてくれる。

周りの人は皆、なんで彼女はあんな事をしているんだろう?という風になる。だから私は、「彼女は私の事が好きなんだよ」と言うんだ。

でも皆は「貴方に、そんな事を?」と言うけどね。私は「私達には以前からお互いに理解がある」と言うよ。彼女は人々を尊敬しているんだ。このスポーツで、知識を使って勝利のために援助してくれる人々の事を。

 

D︰質問があります。ジョー・インマンに対して、カナダ流のやり方はあるんでしょうか?貴方のように、あまりに率直な意見をぶつける人に対して。

何故なら僕はたびたび思うんですが、カナダ人のスケート文化というのは…なんと言ったらいいのか…繊細だなぁ…

ちょっとサークル・ジャークみたいな感じがするんですよ。無駄で退屈で。全員がお互いの演技を楽しんで、そして話すんです。どんなにパトリックやテッサとスコットが素晴らしいかをです。そして絶対に批判的にはならない、短所に関して。特に彼らのソチ五輪での問題とか…

 

J︰君は連盟の支援の事を話しているんだね。実際に助けた内容に関して。

 

D︰そうそう。彼らが成長するための、微調整をする場所を探す代わりの、ね。

 

I︰内面では、彼らは批判をしている。私はカナダ人審判と沢山仕事をした。私はよく5月のテッド・バートンのキャンプに行っていた。

 

D︰テッドが批判を?彼はコメントをする時、絶対に批判はしません。

 

I︰テッドは、物凄く、ほぼ率直になれる人だよ。そして彼は色々と私に届けてくれたものだ。彼は刺激をくれた。彼は私の所に色々な選手を連れてきた。もう来てはくれないけどね。もう私は夫ではないようだ(笑)冗談だよ。

 

まぁそれで、彼は日本人を連れてきて、シシィ・クレックを参加させてくれて。それで私達は皆一緒にいた。私達はテッドのエリアのスケーター達と仕事をした。沢山のね。

面白かったよ。何故なら、いくつか本当に良い成長を見たから。でもその彼を試合で見た時には、彼は窓から出ていってしまったけれどね。それでも、出来るようになる事は、全てに関係してくる。

誰だったかな。男子選手で、髪がワイルドな。

 

J︰ケヴィン・レイノルズ

 

I︰ケヴィン・レイノルズだ。彼は素晴らしい若者だ。私達は「So you think you can dance」のようなタイプの事をやった。審判をしたんだ。彼は輝いていたよ!私は驚いた!

私とシシィは、この人は誰なんだろう?という風になった。それで私は、「これこそ君が氷上でやらないといけない事だよ」と話したんだよ。もし繋がりたいなら…とにかく、私は彼が出来るのかどうかの確信は持てていなかった。でも彼はとても素敵な若い男性だよ。とても賢いんだ。

 

D︰僕は貴方が一緒に仕事をしてきた人の話を聞きたいです。トム・ザカライチェクに意見を言った事はありますか?演技構成点を成長するための事など。

 

J︰彼は意見を聞くんですか?

 

I:彼と仕事をした。そして、彼は話を聞く耳がある。驚きだよ。皆彼と仕事をする事を恐れるが、まず私は「黙って私の話を聞きなさい。私は父親役になろう。」と言った。

そして私の取り組みを通して、彼は最終的に気づいたようだった。私がスケーター達を助けるために、ここに居るという事をね。そして、彼はしっかり聞ける人だ。

 

D︰トムコーチは音楽性ですとか演技構成点に関して理解が無いように見えますが…

 

I︰彼は、私が助言したような間違った場所には居なかった。もしスケーター達に演技構成の事に取り組む仕事を、毎日やらせないとしたら、そういう間違った場所を作ってしまう。そのうち問題になる。

 

D︰未だに取り組んでいませんよ。それにトムはとても野心的です。ですから、それは僕には道理が通っているように聞こえません。

 

I︰望みがあるのは…名前はなんだったかな、今あそこにいるのは…タミー・ギャンビルだ。彼女が私に完遂させたい事を言ってきたんだ、彼女の生徒達の事で。私は以前にもタミーと仕事をした事があるが、彼女はそういう事に興味を持っていた。

ただ、トムは問題ないよ。もし彼が私に軽蔑的な事を言っても、彼は意地悪いようには絶対ならない。私は彼がそういった事を言わないといけない事も知っている。

それからトム・ディクソンとも仕事をした。少しだけどね。  彼があるプログラムに取り組んだ時だ。ミネアポリス出身の男子選手で…

 

J︰アレックスですね。

 

I︰アレックス。その仕事は本当に精力的だった。私はトムの仕事が好きだ。彼の仕事はなかなか良いよ。でもそれは全て、スケーターに委ねられる。スケーターがやっている事と同様の事をただやっているだけでは…

 

D︰それから、トム・ディクソンは貴方と似たような背景を持っています。ダンス、音楽です。

 

I︰私は彼を尊敬している。そして彼からも敬意を感じる。彼の話し方から。

そして、誰かが私の言っている事を信頼しているとしたら、彼らは聞くんだ。時々、完全にシャッターをおろしたようなコーチがいる。審判もだ。彼らは興味がないんだ。

 

J:スケーター達をどうやって見つけるのでしょう?貴方の所にスケーター達がアプローチしたり、質問したり出来る事を、スケーター自身が見つけて、やって来た事はありましたか?

 

D︰ジョン・コフリンは質問に来ましたか?

ジョンにアドバイスをしました?

 

I:そうだね、来たよ。

 

J:トーニャはどうです?トーニャは貴方の所に来たり質問したりはしなかったですか?貴方が彼女に「結婚したままの方がいい」と言った人とは違うんですか?まったくもう、ジョー。

 

I:トーニャも来たよ。NHK杯の時だ。3Aを降りた直後だった。彼女はとても興味深い人間だったよ。だが彼女の育った環境が、彼女を下降させてしまった。道は2つは無いものだ。

彼女はメンタルの事から抜け出すために、沢山の助けが必要だったと思っている。これはただ私自身の心理分析だけどね。

 

J︰でも貴方には彼女との個人的な経験がありますから。

 

I︰彼女は自分を信じる事が出来なかった。それがまず1つだ。私の見解では。そして、彼女は自分がいつも不十分だと思っていた。適切には言えないけど、それが私が彼女から感じた事だ。彼女はただ言い続けていた。

「私が3Aを跳んだら、みどりに勝てますか?みどりに勝てますか?もし私がこのジャンプを跳んだら」とそればかりだ。

だから私は「いや、3Aよりも大切なものがある。」と言っていた。そう、それはすごい点になる。それは審判の脳裏に焼き付いて、彼らは点数を出すんだ。でも他のジャンプを3回とか転んではいけない。そしてそれでも勝ってしまう。

それから、ついに彼女は転倒した。それで、「仮定で取り組むのはやめよう」「上手く出来るように、前向きに考えよう」と言った。「そのジャンプを手に入れたいなら、やるがいい。そして自分の行く道を知るだろう。」と。

トーニャに関して可笑しな事は、私はトーニャが芸術性に欠けたスケーターだとは思っていなかった。だが彼女は耳を開いて誰かの意見を聞く事はなかった。彼女はブラインドを降ろして、何も聞きたがらなかった。

 

J︰彼女は時々、ある瞬間を印象に残していましたよね。指に防護具をつけて。あれこそが実は精巧に造られた瞬間でした、純粋に。

 

I︰彼女はもっと色々な事をやっていたよ。ただ、彼女は自分の中に最も酷い敵がいた。個人的な考えでは。

 

D︰トーニャはみどりよりも本来的な優美さを持っていました。

 

I︰疑いようもない。

 

D︰伊藤みどりの92年の五輪のプログラムなんかは、彼女の弱い部分を隠す上手い振付でした。我々は素晴らしい振付として(当時は)見ていたと思いますが。

 

まとめとして、質問があります。今は新採点があります。新採点システムにおけるプログラムは好きですか?この形式は貴方を苛つかせるものでしょうか?それとも良くなったでしょうか?

 

I:とても滑稽だよ。私が昔のスケートを見返してみると。「昔の」と呼ぶね。とにかくジャネット・リンだ。当時の優れた選手だ。動きの中で、音楽と繋がる。だが今ではパブロ・ピカソフレスコ画だ、確実に。彼女はフレスコ画でもきちんと出来ていた。点も取れた。エッジワークが良かったから。彼女はベストなフィギュアを描いてはいなかったかもしれないが。何故なら彼女のターンが問題だったと思っている。

でも、彼女は良いエッジを持っていた。彼女はパワーを得ていたが、フリーは別だったね。 

 

ただ、私は他のプログラムを見返す時、ジョン・カリーでさえも…彼は氷上で美しいんだけど、当時のプログラムでは、かなりつまらないんだ。大した事をしていないんだ。ステップでは、チョクトー、チョクトー、ホールトゥ。チョクトー、チョクトー、ホール。(ここ歌ってるんですが、良く分かりません)

 

私がブライアン・ボイタノと話した事を見たと思うが、ブライアンと私はとても良い友人だ。まず、彼は新採点システムが嫌いなんだよ。今でも嫌いかどうかは知らないが。

私は彼に言った。「君たちは、今のスケーター達がやらないといけない事を、するべきではなかったのか。ステップシークエンスもだ。君たちはフィギュアをやっていたんだ。」

想像してみなさい。それはどれほど素晴らしいものになっていたのか。だから、「嫌いだとかそういう事は聞きたくない」と伝えた。

 

今、ついにスケーティングの言語を私達は見ているんだ。スケーティングの中でだ。それは6.0のシステムでは見た事はなかった。スリーターン、チョクトー、モホークくらいだ。多分ジャネットがロッカーやカウンターをやっていた。プログラムでのちょっとしたシークエンスの中で…ただの動きの中でね、スケーティングの。シークエンスの中ではなく。誰一人、複雑なシークエンスをやらなかった。


ずっと昔を振り返ってみても、フリーが5分だった頃のプログラムだ。殆ど何も無いんだよ。

美しいエッジスケーティングと、他にも色々あったが、ただそこには…もっと、もっとスケーティングの何かがあるべきだった。もっと身体を使う事だ。多方向に身体を使う事のための場所だよ、外側、内側、低い所など全てに達するように。身体を使う事や、そういう動きだ。左右非対称かどうか、若しくは選手がやりたいようなものでもいい。

 

だが本来的は幾つかのものは恋しいよ。良くなったと思うかというと…いや、違うものなんだ。素晴らしいものになると思う。そして、今はまだ道半ばだ。忘れないで欲しいのは、新採点システムはまだ若いんだ。その他要素の全てにおいてだが、そこまでの発展を全く見ていない、他の色々な所で。良い大技を除いてね。

まずファーストマーク(技術点)が出て、それからセカンドマーク(演技構成点)が上がってくる。かつて大技のレベルが均等に揃った時に、人々は表現にもっと取り組み始めた。私はそういう事が、このスポーツで起きると思うよ。私達は5回転をいつか見る日に近づいている。私は可能だと思わない。恐らく跳ぶことは可能だろうが、馬鹿げている。今ある課題というのは、過去20年間のように発達するべき事だ。そしてこのスポーツをもっと美しいものに変える事だよ。そうなったら、本当の50-50になる。60-50ではなく。バランスだよ。今は技術が全てを動かしている。様々な動きの事ではないよ、どう時間を使うかだ。

少なくとも、今ではスピンは評価を得ている。スピンは6.0のシステムでは0だったよ、0だ。ルシンダ・ルーは多分もっといい順位が取れるだろう。何故なら(何故当時順位が低かったかと言うと)彼女は3回転フリップやループくらいしか跳ばなかった。

 

それが私の感じている事だ。私はこのシステムは好きだよ。審判の仕事が好きなんだ。というのは、私はもう仕事は終えた。採点表を置いて、私が見てきた全ての事を伝えてきた。私の学んだ背景から。

私は完璧に審査していなかったよ、それが論点ではない。問題は、私の分析してきた事を伝える事だ。筋が通るように伝えるんだ、私が信じていた事をね。だからこそ審判は9人いる。1人ではなく。

 

D︰本日は私達のチャンネルに参加して下さって有り難う御座いました。またお話を聞かせて下さい。

 

I︰楽しかったよ。有り難う。

 

終。